夢幻なる絆

□6.四神を救え
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「ですがこんな所を見るなんて、いい趣味とは言えませんよ」
「すすみません、その・・・」
「ゆき、どうして謝る?人目も場所も気にせず・・・やるあんた達の方が悪いんだろう?」
「やっぱりそうだよね。・・・でもこれには深くて長い理由があって・・・。ごめんなさい」

神子は帯刀さんのトゲのある言い方に恥ずかしそうにも頭を下げ謝るが黒髪の男性に正論で止められ、それに反論できず今度は私が一応理由にならない理由を言って謝罪する。

「私の妻は本当に素直すぎるね。私達はそんなに悪いことなどしてないと思うけれど?」
「帯刀さん、屁理屈を言わないで下さい。世の中には秩序って言葉があるじゃないですが?」

相変わらずケロッとしてる帯刀さんに、私は少し頬を膨らましまともなことを言って考えを改めさせる。
その秩序を守れなかった私が言う台詞じゃないけれど、このままだと完全に帯刀さんのイメージが悪くなるだけ。
私のイメージが悪くなるのなら、別に初めっからないから構わないけれど・・・。

「・・・小松の言っていたことは、事実だったんだな」
「チナミちゃん、酷い!!チナミちゃんまで私のこと疑ってたの?」
「えあまぁ・・・すまない」

そんな中独り言のように呟くチナミちゃんの言葉を聞き逃さなかった地獄耳の私は、せっかく忘れかけていた土方の怒りと悔しさが再加熱し声を張り上げチナミちゃんを睨み付けた。
チナミちゃんは私に恐怖を感じたらしく、ビクッと数歩後退し情けなく謝罪する。
どうやらこないだのことと良いチナミちゃんは、自分より恐ろしいと思った相手には服従するらしい。

とにかく悔しかった。

どいつもこいつもどうしていつも私の言葉を信じない?
確かに私と帯刀さんとじゃ不釣り合いなのは十分分かっているけれど、何も真っ向から全否定しなくても良いじゃない?
少しぐらい私を信じてくれたって・・・。

「夕凪、落ち着きなさい。君の魅力の分からない男なんて、見る目がないんだからほっとけばいい。まともに相手にするだけ馬鹿らしいとは思わない?」
「それはそうですけれど・・・私が帯刀さんの妻だって信じてもらいたいんです」
「だったらもっとお淑やかに振る舞えばいい。なんなら明日から作法全般を習ってみる?夕凪が望めば、京で一二を争う先生に来てもらうけど」
「うっ・・・それはちょっと・・・」

一番痛い所と一番適切な解決方法をズバッと言われるけれど、それは私にとって無理に近い難題でもあった。
私がどう頑張っても、今さら大和撫子になれるわけがない。
でも確かに私が大和撫子になれば、もう疑われなくなり嫌な思いをしなくなる。
帯刀さんだって、そっちの私の方が良い?
そしたらやる前から諦めないで、並以上に努力してみるべき?

「うわぁ、それが愛する妻に言う言葉かよ?やっぱヒデぇ奴だなあいつ」
「都、そんなこと言ったら失礼だよ」

都と呼ばれる黒髪の男性はそんな帯刀さんを見てそう率直な言葉を呟き、神子は気まずそうに男性に耳打ちする。
多分私達には聞こえないように言っているつもりだろう。

バリバリ聞こえてますが・・・。

「だけど私は今の元気で愉快な夕凪のままの方が、何よりも好きだけれどね。大和撫子になった夕凪など、普通過ぎてつまらないよ」
「・・・それ嬉しくないです」
「・・・ドドSだ。こいつ」

それは帯刀さんにも聞こえたらしく私を再び抱き寄せそう言ってくれるけれど、そんなの素直に喜べることではなく思わず苦笑する。
都と神子だけでなく残りの人達も、やっぱり私同様それ以上に顔が引き攣っていた。

確かに帯刀さんはドSです。




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