夢幻なる絆

□6.四神を救え
32ページ/48ページ



「夕凪、良かった無事で」
「帯刀さん」

帯刀さんがやってくるなり私を抱き寄せ耳元で安心したように呟き、私も帯刀さんに出遭え何かが途切れホッと安心することが出来る。

気づかなかったけれど、やっぱりあれは怖かったんだ。

「事情はシュウから聞いた。しばらくは私が傍にいるから、もう何も心配はいらない」
「ですね。後は私がやっておきますから、御家老は凪と帰った方がよろしいかと」
「そう言うわけにもいかない。後少し指示をしたら帰ることにするよ」

私の手を握ったまま西郷さんの心遣いに首を横に振り、そう言いながら周辺を見回し状況を確認する。
嬉しいような悲しいような複雑な思い。
私なんかのために政務を疎かにして欲しくないけれど、私を一番に考えて欲しかったりもする。

「そうですか」
「それにしてもずいぶん派手にやってくれたね。それでその怪我はどうしたの?」
「これは流れ弾にかすってしまいまして」

結構一大事なことなのに西郷さんは対したことなさそうに言って、状況説明の話はしばらく続く。

私が口に出すことではなかったから、大人しく黙って二人の話を聞いている。



「・・・本当にあの女。小松さんの妻らしいですね」
「西郷さんが、嘘付くはずないだろう?我々は戻るぞ」
「でもなんで小松さんは、あんな女を選んだだろうな?もっといい女なんてごまんといるはずなんだが」
「トシ、いい加減にしろ!!」

真実を知り今度こそ大人しくなった土方が独り言のように今度は帯刀さんを疑い出すのだが、今までやんわり抑え効果のなかった近藤さんがついに切れて迫力ある言葉を言い放す。
これには話に夢中になっていた帯刀さんでさえも、ビクッとして話を中断させ近藤さんを見つめる。
普段温厚な人ほど恐ろしいのは、どうやら本当見たい。

「・・・近藤くん?」
「部下の不祥事は、上司の責任です。凪さん、私がトシの変わりに、凪さんの下僕になります」
「夕凪、説明しなさい」
「土方が私のこと不審者扱いして失礼極まりないことを言うから、罰として私の下僕になってもらったんです」

土方にはあんなに怒っている近藤さんが私に対しては相変わらず腰が低くそう言うことになり、帯刀さんに事情を求められ私にしては簡潔に説明してすべては丸く収まるはずだった
・・・・が。

「駄目。夕凪はどうしていつもそう言うくだらないことばかり考えて、実行しようとするの?二人とも妻が大変迷惑を掛けてすまなかった。妻の言葉などまともに聞かなくて良いから、もう行っても良いよ」
「なっ?」

帯刀さんはこれ以上ないぐらい呆れ果て私の言葉などまったく聞かずに、思いも寄らないどんでん返しの結果へとなる。
家老に言わたら多分それは私の言葉よりも絶対だから、近藤さん達は私達に頭を下げてどこかに行ってしまった。

ひょっとして私がうまく説明できなかったから、私がどれだけ傷付いたか分かってくれてない?
ブスって言われるならまだしも、よりによってドブスって言われたんだよ?
しかも面と向かって。
それなのに、どうして?



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ