夢幻なる絆

□6.四神を救え
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「シュウちゃん、もう少しゆっくり飛んで」
−凪?あ、すみません

シュウちゃんを必死に追い掛けることしばらくして、限界を感じた私は息を切らしそう言って地べたにしゃがみ込む。
それに気づいたシュウちゃんは先行くのを中断させ、私の肩に止まりへばっている私を気遣う。

今日だけでどれだけ、自分の限界が情けないことを実感したんだろうか?

「帯刀さんはどこにいるの?」
−おそらくこの辺にいるかと。
「ここって・・・御門?」

言われて辺りを見回せば、ただ今戦の真っ最中であろう御門だった。
私が今一番近づいてはいけない場所。
でもその割には、辺りが静かである。

−戦はすでに終わってるようですね。晋作の気配を感じませんし、私だけで帯刀を捜しに行ってきます。
「うん、よろしく」

シュウちゃんの適切な答えに私は異論なく頷き、再びシュウちゃんは羽ばたき帯刀さんを捜しに行く。




「あお前は」
「え?」
「朱雀の札を盗んだのはお前だろう?」
「いいきなり何?」

向こうの方からやって来た土方と近藤さんに目が合うなり、なんの脈絡もなく私を犯人扱いしすごい勢いでやってくる。

それは真実だけれども、疑われることはありえない。
だって私はずっーと近藤さんと総司くんと一緒にいて、拝借したシロちゃんは誰にも見られてないと言っていた。
悪いけれど土方がシロちゃんを上回る人だとは思えない。

「数日前朱雀の札が消えていた。その日の訪問で一番胡散臭いのは、お前しかいないんだ。お前本当にあの小松さんの正妻なのか?」
「わしはあまり疑いたくないのだが、家老の正妻がどうしてこんな場所に一人でいる?」
「うっ・・・。ちょっと帯刀さんを捜しに・・・」

どうやら確証がない失礼な言い方をする土方には頭が来た物の、近藤さんに痛いところを付かれ答えに迷い挙動の態度を取ってしまう。

確かにこんな所に一人でいるなんて、おかしいかも知れない。
かと言って本当のことを言っても、怪しまれるのは同じ。

「やっぱり怪しい。ちょっとこい」
「え、放してよ。私は本当に小松帯刀の正妻なんだってば」
「この期に及んで嘘を付くな。このドブス」

予想通りさらに疑いの目は強くなり腕を強く捕まれ抵抗すれば、力と憎しみを込められ私を侮辱する。

今日は厄日だ。
いくら私でもここまで言われても平気な分けなく、胸にグサッと刺さり大粒の涙があふれる。
ブスにドブスと言ったら犯罪。

「おいトシ。何もそこまで言うことはないだろう?」
「いいんだよ。俺は真実を言っただけだし、こいつはほら吹きなんだからよ。じゃぁ頓所で詳しく話を聞かせて」
「・・・斬り・・・団。・・・ボロ雑巾・・・」
「は?」
「人斬り集団。時代の波に乗れなかった使い捨てのボロ雑巾」

罰の悪そうに土方を止めようとする近藤さんだったが丸っきり効果がなく、悲しくて悔しさあまり私は涙ながら禁句だろう言葉を言い捨てた。
私だってこれほどのことを言われたんだから、言っても罰は当たらないだろう。

人斬り集団は良く歴史好きの父が言っていた言葉で、ボロ雑巾は私が内心気の毒に思っていたこと。
幕府にとって彼等は捨てごま。
使われるだけ使われて捨てられた。
それで時代の波にも乗れずそれでも主に服従し続け、挙げ句の果てには新政府軍に殺されてしまった哀れな人達。

「なんだと貴様、もう一度言って見ろ!!殺すぞ!!」
「ほらやっぱり。自分だって酷いこそ言った癖に、自分が言われたらそうやってキレる。馬鹿じゃないの?」

案の定顔を真っ赤にさせ剣まで抜いてキレる土方に負けず、私も憎しみ意を込めて声を張り上げ喧嘩は悪化する一方だった。




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