夢幻なる絆

□6.四神を救え
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「帯刀さん、早く帰ってこないかな?」

日が傾き掛けた夕方屋敷から少し離れた場所で、帯刀さんの帰りをシロちゃんとシュウちゃんの三人で待っていた。
きっと帯刀さん忙しくって帰ってくる暇なんてないことぐらいちゃんと分かっているはずなのに、それでもいてもたってもいられなくてこうして少しでも早く出迎えられるように待ち構えている。
本当なら薩摩藩邸まで行ってみたかったけれど、外出禁止の私にはこれが限界。
もしかしてこれも実はアウトかも知れない。

−凪心配しなくても小松帯刀ならば、すぐ帰ってくるだろうからもう中へ入らないか?
「・・・うん。でももう少しだけ待ってる」
−仕方がないですね。・・・もう少しだけですよ。
−だったら我も、一緒に待とう。
「・・・ありがとう二人とも」

わがままを言って動かない私を二人は怒ることなく、優しい言葉を掛けてくれ一緒に待ってくれる。
帯刀さんが帰ってくる方角を見ていても一行に人影すりゃなく、それどころか事態は一気に悪い方向に急変した。
私は誰かに身動き出来ないよう掴まれ、更に剣を喉に突き付けられる。
何もかもいきなりすぎる展開に、私はパニックを起こす。

え、何?
私もしかして今すごくピンチだったりする?

「・・・玄武の札をどこにやった?」
「え?その声は高杉?」
「ああ、そうだ。まさかお前が小松帯刀の奥方だったとわな。それで答えは?」

特徴ある良い声にすぐ誰だか分かったのはいいけれど、その相手は出来れることならばもうこの時期に会いたくなかった。
仲間って言うか同盟を結ぶことになってから、再会したかった・・・。

「そんなの知らないし、私じゃない」
「嘘を付くな。お前と会う前は確かにあった。お前しかいないだろう?」

ばれないよう慎重にしらをきるけれど、全否定され首筋にチクリと痛みが走る。
やっぱり高杉には私の嘘など簡単に見抜かされて、私はここで呆気なく殺されるんだろうか?

・・・そんなの絶対に嫌だ。
私にはなんの力もないけれど、抵抗ぐらいはできる。

ガブッ


「・・・・・イッ」

そう強く思った私は高杉の手の甲を思いっきり噛み微かに緩んだ隙を逃さず、急いで高杉と距離を取り一旦は危機を回避した。
しかしこれからが問題だ。
なぜならば、私は高杉に喧嘩を売ってしまったのだから。

―凪、大丈夫か?
―うん、少し痛いけれどね。
―後は我に任せ、小松帯刀の元へ急げ。
―どこに帯刀さんがいるか知らない。
―私が案内します。シロ、頼みますよ。
―任せておけ。我の愛する人の子を傷つける輩は、どんな目に合うか思い知らせてやる。

これからのことを考えようとすればシロちゃんが私に指示して、私を護るように前に踏み出す。
久しぶりに感じるシロちゃん本来の白虎の気。
凄まじい迫力に、私は高杉の命の危機を感じる。

「シロちゃん、高杉を殺したら駄目だよ。これから先重要となる人なんだから」
「貴様もあの女と同じ偽善者か?そう言う考えが甘いんだ」
「は、私が偽善者?確かに私の考え方は甘いとは思うけれど、この先高杉が必要なことは事実なんだし」
−凪、早く行きますよ。
「あ、うん」

思わず高杉の心配をするとそれが気に食わなかったらしく、今まで一度も言われたことのない言葉で罵倒されてしまう。
あまりにも私とは見当違いな言葉に耳を傾け首をかしげるけれど、シュウちゃんの声で我に返り帯刀さん目ざし走り出す。

偽善者?
どこをどう取ったら、私が偽善者になるんだろうか?



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