夢幻なる絆

□6.四神を救え
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「美味しいですね。帯刀さん」
「夕凪、生野菜も食べないと駄目だよ」
「後で・・・食べます・・・たぶん・・・」

夕食は天ぷらにかつおのたたきと炊き込みご飯で美味しくいただいていると、生野菜にまったく手を付けていないこと厳しく指摘されてしまう。
視線を泳がせ曖昧に答える私。
生野菜はあんまり好きじゃないから、野菜ジュースや焼いたりしてごまかしている。
まだトマトやきゅうりは許せるけれど、他は特に人参とセロリ絶対に食べたくない。

「夕凪は私の子供が欲しいんでしょ?」
「え、あはい?」
「だったら好き嫌いなくなんでも食べる。子供に示しがつかないでしょ?」
「・・・そうですよね」

何をいきなりと言い出すかと思えば、少し気が早いけれど正当な言葉に何も言い返せない。
将来産まれて来る我が子に、当然好き嫌いしたらいけないとしつけをする。
それなのに私が生野菜嫌いと言ってたら、しつけなんて到底出来ない。

でもまぁ子供がまだ授かってもいないんだから、気長に少しずつ克服していけばいいか。

「・・・食べさせてあげるから、口を開けなさい」
「はい」

そう思っていた矢先、帯刀さんはそう言って私に生野菜を口まで持ってくる。
渋々口を開け食べてみたけれどやっぱりまずくて、顔をしかめそれ以上はい拒否反応が出てしまう。
人参そのものの味がして吐き出したい。

「私は子供と結婚したわけじゃないんだよ。それとも夕凪が私の子供になる?」
「うっ・・・なりたくないです。少しずつ食べられるように・・・人参は一番最後に克服します」
「駄目。一番苦手な物から克服しなさい。食べられるようになるまで毎朝夕、私がこうして食べさせてあげるから」
「そそんな無理ですよ」
「駄目。拒否権は認めない」

すぐに楽な道に行く私らしく厳しい言葉に最大の難関を後回しにしようとすると、ことごとく却下され最悪過ぎることを叩き付けられ涙目で拒否っても認められず。
食べさせて貰えるのは正直嬉しいんだけれど、生人参を朝夕食べないといけないのは恐怖でしかない。

「ならせめて最初うちは、一口だけで勘弁して下さい」
「・・・仕方がないね」

必死のお願いやっとどうにか許可を貰い、帯刀さんは残りの野菜を代わりに食べてくれる。
美味しそうにボリボリと音を立てながら。

これだけ見ていると不思議と、美味しそうに思えるんだよね。
でもそれで私もと言ったら、悲劇になるのは目に見えている。

「そう言えば帯刀さんの嫌いな食べ物って」
「残念ながら、私には嫌いな物なんてない」
「・・・・・・・」

素朴な疑問に胸を張って答えられた瞬間、心の底から聞かなければ良かったと後悔する私だった。

楽しみだった食事が、明日からは地獄になるのかな?



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