夢幻なる絆

□6.四神を救え
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「それで夕凪はいいんだね」
「・・・はい」
「なら私もそれでいい。夕凪。すべて話してくれて、ありがとう」
「帯刀さん・・・」

話し終わると帯刀さんはすべてを受け入れてくれ、そう言って私を優しく包み込んでくれる。
思ってもいない予想外過ぎる展開に戸惑い理解出来ない私だったけれど、帯刀さんの変わらない愛情に心地よさを感じ優しい気持ちになった。
普通だったら帯刀さんは私達の世界での物語の登場人物でしかないって分かったら、ショックを受けて私の元から離れていくのに帯刀さんは私の傍にいてくれる。
それだけ私のことを愛してくれているのか、それとも帯刀さんにとってはどうでも良いことなのかは分からない。

「でもこの世界が物語であることは、私以外の誰にも言わないこと。私だから受けいられることだからね」
「帯刀さんは、平気なんですね」
「事実夕凪は私の腕の中に、こうしているからね。それより私は夕凪が見た約二年後の世界の方が深刻だよ」

やっとの思いで聞いたのにあっさり答えられ、あんまりそのことについては考えていないようだ。
自分の世界未来の方が大切なのは、いかにも帯刀さんらしい。
器の大きい人で良かった。

「それは私が四神を早く集めて、神子達と協力すればいいんです。それと薩長同盟を成立させましょう」
「そうだね。野獣が後二匹も増えるのは気が進まないが、夕凪との幸せな未来を過ごすためには仕方がない。私も最善の手をつくすよ」

「や野獣・・・」
「これが小松帯刀だ」

帯刀さんの手を取り決意を強く宣言すれば帯刀さんも前向きになって言ってくれたけれど、シュウちゃんにはショックだったらしく優しい笑みを引き攣らせシロちゃんは深いため息を付き諦めていた。
これが新人とベテランの違い。

グッー


「夕凪、少しは場の空気を読みなさい」

最大の不安がなくなった途端お腹の音が鳴って、せっかくのいいムードが台なしになり帯刀さんの機嫌を損なわす。
明らかにこれは私が悪いんだけれど、お腹が減るってことは自然なんだから仕方がない。

「すみません。でもお腹が空くってことは、幸せだからなんですよ。未来ではまったくお腹が空きませんでしたからね」

一応謝るだけ謝り柄にもなく可愛らしく訳を言って、帯刀さんの懐に顔をすくめて甘えてみる。
事実これは本当のこと。
悩み事はまったくないとは言えないけれど、それでも今は幸せだからお腹は普通に空く。

これでもう・・・。

「誘惑してどうするの?私だけ満腹にしていいの?」
「!!それで帯刀さんはいいんですか?」

誘惑してるつもりはなかったのにそう言うことになって、食事抜きで行き着く所まで行ってしまいそうになる。
手始めにディープキス。
念入りで吸い付くようなキス。

「・・・夕凪に勝るご馳走は、世界中どこを探してもないからね。本当かどうか試してみる?」
「いいえ。それは食事が終わってからで結構です」
「まったく。私の妻は相変わらず花より団子・・・。食事後に取っておくよ」


試してみるって・・・。
そんなもんで私のお腹は、まったく満たされません。



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