夢幻なる絆

□6.四神を救え
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「と言うわけで、シロちゃん宜しくね」
「ああ。ちゃんと朱雀を凪の元へ持って行くから、安心して待っているがいい」
「そうだね。だけどもし何かあったら、逃げるんだよ」
「分かっておる。では行ってくる」

正装に着替え駕籠に揺られ再び八木邸に向かう途中、シロちゃんと打ち合わせをして無事を気遣う。
朱雀のことは早く助けたいけれど、それよりもシロちゃんの方が大切。
だから何かあったら、まずは逃げて欲しい。

そしてシロちゃんは、駕籠を後にした。


「奥方様、到着致しました。お手をどうぞ」
「ありがとう。なるべく早く戻って来るから、どこがで休んでてね」
「は、ありがたきお言葉」

藩士の手を借りて出るとそこは確かに現役の八木邸で、私は藩士達にそう言って門をくぐる。

どこかのお姫様になった気分・・・お姫様見たいなものか。
玄関には人の良さそうな男性と、なんとなく軽そうな男性がいる。

と言うことがこの二人が近藤勇と土方歳三?
ゲームだと分かっていても、これは感動もの。

「これはこれは小松殿の奥方。ようこそいらっしゃいました」
「いきなりの訪問の御無礼をお許し下さい」
「いいえ。凪さんのような人が新選組に興味を持っていただき光栄です。男所帯のむさ苦しい所ではありますが、どうぞ中へお入り下さい」

家老の妻らしく粗相がないよう大河の真似して気品良く受け答し、身振りも優雅になんとかこなしていく。
なのに軽そうな男性は眉間にシワを寄せ、私を疑うような鋭い眼差しで見詰めている。



「・・・近藤さん、本当にこいつが小松さんの正妻なのか?あの小松さんの正妻がこんな普通の女ってことはありえねぇだろう?」
「こらトシ。なんてことを言う?失礼だろう」

その光景が不思議に思い気にして聞き耳立てていると、率直で厳し過ぎるショックでしかない言葉を聞いてしまった。
やっぱりこの軽そうな男性が土方さんで、優しそうな男性が近藤さん。

でもまだ普通に見られるだけ、マシなんだろうか?

「偽物ってことはないのか?」
「偽物?確かに・・・」
「私は本物の帯刀さんの正妻です。確かに私は凡人以下で取り柄もあまりないですが、帯刀さんはそんな私が良いって言ってくれてます。・・・悪いですか?」

危うく近藤さんにも疑われてしまいそうになり、私は喧嘩腰でそう言い捨て二人を睨みつける。
偽物まで言われて黙っていられるはずがない。
アーネストだってそこまで言わなかった。
悲しみよりも腹が立つ。

「聞こえていたのか?」
「ええ、もちろん。人を外見だけで判断されたくないのは、あなた達だって同じはずじゃないの?この農民風情のなりきり侍集団って、見下され全否定されたくないでしょう?」

聞かれていたことに驚く二人に、私は禁句である言葉を憎しみを込めて言ってやる。
私だってそれと同じぐらいのこと言われたんだから、これぐらいのことを言って当然だ。
やられたことはやり返さないと分からない。
手荒な手段だけれど、これがもっとも効果的。

「・・・確かに。本当に申し訳ない」
「すまなかった。もう言わないから。・・・気の強い女」
「なんか言った?」
「いいえ、何も」

思い当たる節がバリバリある二人は反論せずに謝罪するけれど、土方さんはボソッと一言ぼやくが私の怒りに触れ合えなく撃沈する。




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