夢幻なる絆

□イベント短編
9ページ/18ページ


凪、花札勝負をする。



「帯刀、一体何を持ってきた?」
「夕凪がどうしても私達と、お正月遊びをしたいと言うからね。たまには妻の望みを聞いてあげるのもいいと思ってね」
「お正月遊びと言えば、目隠しをしてやる福笑いに双六。賭け事にも使われる花札。百人一首もかかせません。外なら凧上げに羽子板。負けた人には墨で顔に落書きをするのですよね」


予想以上にお正月遊びを良く知っているアーネストは、目をキラキラと少年のように輝かせテーションMAXで思いを熱く語りだす。
聞かなくてもやりたいのは一目瞭然だろう。


「サトウくんやけに詳しいんだね?そんなに興味があるのなら、遊ぶ物を選ばせてあげる」
「え私は別に興味などありません。詳しいのは上司に頼まれて仕方がなく調べただけです」


そんなアーネストを掘っておくはずがない帯刀さんは、クスクス笑いながら上から目線で挑発をしかける。
するとすぐに我に戻ったアーネストは咳払いをして、興味のないような態度を見せるけれどすでに遅し。
痩せ我慢してるぐらい、私にだってすぐわかる。
だって視線は常に箱にあるんだもん。
でもそのことを突っ込んで私までもがアーネストをからかったらあまりにも可愛そうだから、見て見ぬ振りをしてなかったことにしてあげようと思う。

アーネストって日本に幻滅して嫌っているけれど、本当はまだ好きなんだろうな。
だけどそれを素直に認めることが出来なくって、わざとそんなことを言って否定する。
案外アーネストって可愛い。


「そう?なら龍馬は何をやりたい?」
「花札。そんでもって優勝した奴が、一日殿様気分を味わえるっていうのはどうだ?」


帯刀さんに問われた龍馬は、楽しげに面白そうなことを切り出す。
いかにも龍馬らしくてそんでもって私好みの内容。

「それは面白そうだね。サトウくん、花札は大丈夫?」
「ええ、ご心配なく。その時仕方がなく遊び方も調べました。・・・小松婦人、何がそんなにおかしいのですか?」
「秘密。私も龍馬の意見に賛成。私こう見えても、花札は結構強いんだよね」


まだ意地を張り生意気ないい方をするアーネストが微笑ましくて笑っていると、厳しい視線を向けられ問われるけど珍しく難なく交わし龍馬の話に戻す。
これについてはアーネストに負ける気がしないし、私が花札を強いのは本当の話。
だからその勝負も負ける気はしない。


「なら決まりな。じぁ三回勝負で合計点勝負」
「了解。私も花札には自信があるからね。夕凪覚悟するんだよ」
「それはこっちの台詞です。今日はいつもの私とは違います」
「私も負けませんよ」
「おお、みんなやる気だな。もちろん俺だって」


と私達全員は勝つ気満々で、花札大会は始まった。



そして



「やった。私が優勝。今日一日私の命令はなんでも聞きなさい」


三回の勝負が終わりほとんど一人勝ちした私はニッコリ笑顔の上機嫌で、早速お嬢様になりきり三人を執事扱いをする。
いつも何かやるたんびに惨敗していた私だけに、嬉しさは100万倍だ。

「まさか夕凪がこんなに、悪運が強かったとはね」
「意外な小松婦人の特技ですね。完敗です」
「しょうがない。今日ばかりは凪を敬い尽くしてやるよ」

三人は悔しそうにそれぞれ嫌味にも取れる台詞を言って、深いため息をつく。
だけどそれでも約束は守ってくれそうで、私のテーションはますます上がる一方。

これからどんなことをしてもらおう?



「旦那様、寒ブリの刺身を持ってきました」
「ありがとう。梅。それから今日は夕凪が家長だから、そのつもりでいるように」
「梅さんまで巻き込むんですか?」
「当たり前でしょ?」


何も知らずただ寒ブリの刺身を持って来た梅さんに、帯刀さんは言わなくていいことを言い出し協力を求める。
ことは思っていた以上に大きくなっていて、私にはそれを阻止出来そうもない。


「はい、かしこまりました。良かったですね、奥様?」
「梅さん理由を知らないのに、なんでそんなことをいうの?」
「永年勤めている勘です。それでは鍋ができましたら、お持ちいたします」


まるですべてを知った 梅さんは母親のように微笑みそう言い残し部屋から出ていく。
さすが梅さん。

でも良かったですねって、どう言う意味だろう?


「それでは奥様。要望をなんなりとお申し付け下さい」
「要望か。だったらまずはお腹がすいたから、食事にしようよ。それで何か余響をやってよ」


早速執事になりきっているーアーネストにそう問われ、最初なので無理難題は言わず無難な要望を出して見る。

これで様子を見てから、徐々にレベルをあげてみるつもりだ。
それで最終的には三人揃って腹踊りさせ・・・さすがにそれはやり過ぎか。
龍馬だけだったら、やってくれるかな?
試しに後で、聞いてみよう・・・。


「でしたら私目が、食べさせてあげますね」
「え?それは遠慮させていただきます」
「そんなことおっしゃらずに、奥様は私に食べさてもらうのがお好きでしょ?」
「まぁ・・・」


帯刀さんの台詞に驚き拒否って見るけれども、さらりと図星を言われあえなく撃沈。
これではいつもと立場が変わらないような気がしつつ、結局帯刀さんに食べさせてもらうことになる。

これ以上頑固に拒否れば、怖いと思うのは気のせいではないはず・・・。


「ではまず生人参を召し上がりに・・・」
「絶対に嫌です。今日だけは生野菜は食べません」
「それはいけません。旦那様とのお約束を忘れたのですか?嫌いな物を克服するまで、毎日朝と夕食べると。約束を破れば、旦那様から仕置きがありますよ」
「でも今日は私の言うことは絶対なんですよね?」
「それとこれとは別の話。大人しくさっさと食べなさい」
「うぐ・・・」


一度服従してしまったのがいけなかったのか完全に帯刀さんに主導権を握られてしまい、いくら私が言っても聞き入れられず卑怯なことを言われて反論できない状況に追い込まれる。
それでも強気に逆らい続けていればどうにかなるかも知れないけれども、そこまでして逆らって我を通したくないし帯刀さんと不仲になるのはもっと嫌だ。


「さすが小松さんですね。これでは小松さんが勝ったみたいですよ」
「凪は帯刀に勝てないからな。それに凪もあれで結構楽しんでるんじゃないか?」
「ですね」
「楽しんでるわけないじゃん。シクシクシク」


そんな私達を見物するように龍馬とアーネストは意気投合していて、私は泣きながらも違うと訴える。
二人は他人事だからって楽しんでいるだけで、私の執事の癖して助けてはくれない。
そこまで私はマゾじゃないと言いたいけれど、説明するのもメンドイ。


「奥様、口を大きく開けて下さい」
「・・・はい。・・・・まずいです」
「なら口移しで食べさせてあげましょうか?」
「それだけは勘弁して下さい」



・・・せっかくの優勝特典が台無しになる。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ