夢幻なる絆

□イベント短編
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凪、バースディーケーキを作る。



「それにしても本当に未来の日本は興味深いですね。ここまで国際的になるとは」
「まぁね。未来の日本は外来語も外来品もありふれているし、行事は楽しければ宗教は関係ないがモットーなんだよ」


お菓子作りの本を熱心に読み感心するアーネストに、私は自分なりの解釈を含めた日本の今を教える。
帯刀さんの時と同じ反応をするアーネストを見てると、懐かしさを感じ微笑ましい。

あの時の帯刀さん、私の話を熱心に聞いてくれたよね?
なんだか懐かしいな。

帯刀さんの誕生日ケーキを作るためアーネストに必死で頼み込み未来の情報提供をすることで、どうにか使わせてもらえることになったキッチンで今の所は順調に製作中。


「今の日本を見る限りでは、まったく想像出来ないことですね。私もそう言う日本を見てみたかったです」
「来世で見られるかもね。うん生地はこんな感じでいいか。私ってば天才」


どこか皮肉っぽくことを言いつつも、叶わない憧れを抱く少年のようなアーネストを軽く受け答え。
そして最高傑作と言える生地が出来て自画自賛する。
私でも練習をしまくれば、効果はそれなりに現れることが立証された。


「小松婦人は相変わらず単純ですね。料理とは焼き加減が重要なんですよ。小松さんからお聞きしましたが、あなたは火加減の調節が大の苦手のようですね?」
「うっっ・・・。帯刀さんのおしゃべり・・・」


そんなご機嫌な私に悪魔の笑みに変わったアーネストから、痛すぎる現実をたたき付けられ私のご機嫌は一瞬に奈落の底へと堕ちていく。

けして忘れていたことではないけれど、考えないようにしていただけ。
前向きな姿勢で取り組めば、成功するって言い聞かせてた。
私って変なプレッシャーに弱いから、失敗するって思えば思うほど失敗してしまう。
それが私。


「仕方がないですね。私が手伝います」
「え、いいの?」
「はい、小松さんには日頃からお世話になってますからね」
「ありがとうアーネスト」
「いえいえ。小松さんが腹痛を起こして、倒れたら困られますからね。彼はあなたに激甘ですから、例えそれが猛毒であっても喜んで食べるでしょうから」
「酷い。私帯刀さんに猛毒なんてあげないもん」


せっかく親切なアーネストに心から感謝する私に、最大の皮肉を言って嘲笑い私の頭をくしゃくしゃになぜる。

アーネストとはそう言う奴で、感謝した私が馬鹿だった。
まぁ私の反応が子供見たいなのが弄ばれる原因なんだけれど、それでもやっぱり酷いのは変わらない。


「冗談ですよ。ちゃんと手伝いますから、機嫌を直して下さい」
「・・・分かった」


明らかに上から目線で不満があっても帯刀さんのためだから、爆発してしまいそうな気持ちを押し殺し渋々頷いた。





「完成!!」
「デコレーションがすごい個性的で何と言うか、いかにも小松婦人らしい仕上がりですね」


アーネストのおかげで焼き加減がうまく出来て味もそこそこで、悪戦苦闘の末やっとのことでデコレーションも完成。
無事完成したことに両手をあげ喜んでいると、笑顔を引き攣らせ微妙な感想を述べられてしまう。
アーネストにしては珍しく遠回しな言い方だけど、それでも十分嫌味である。

相変わらずとんでもない悪魔で、いつかギャフンと言わせたい。
でも今伝ってもらっている以上、今日のとこは我慢我慢。


「形が多少悪くても、私の帯刀さんへの愛情はたっぷりなんだからね」
「そうですね。でもあまりにも小松婦人の愛が重すぎると、逆に引かれてウザがれることもありますよ」
「アーネストの馬鹿!!」


バシッ



今度はストレートで嫌味でしかない台詞に我慢しようと思った気持ちは消えさり、声を張り上げ拳でアーネストを殴り倒していた。
まさか私がこんな行動を取るとは思っていたアーネストは油断していたらしく、あっけないぐらいにノックダウンして動かなくなる。
そんなアーネストを放置し、私はケーキを持ってその場から去ったのは言うまでもない。

帯刀さんは私の愛をすべて受け止めてくれる人。
形が悪くても、愛さえあれば問題ない・・・よね?




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