夢幻なる絆

□イベント短編
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凪、ハロウィンに浮かれる



数日前アーネストの提案でハロウィンをすることになった私達は、ハロウィンの準備に前日まで追われていた。


「よし、完成。これで衣装は完璧」
「これは一体なんだ?」
「魔法使いのアダルトバージョン。そしてシロちゃんは私の優秀な遣い魔」


やっとのことで完成した仮装衣装を広げ上出来の仕上がりに満足感に浸っている私に、私の傍で寝ていたシロちゃんが目を覚まし不思議そうに問うからそう答えながらシロちゃん用の衣装を着せる。

ウィッチハットにマント。それから超ネクタイ。


「我にも作ってくれたのか?ありがとう凪」
「シロちゃんだけね。帯刀さんの衣装はアーネストが用意するとか言ってたよ。私には内緒だって」
「そうか。なんか勝った気分だ」


私の特別扱いにいつになくご機嫌になるシロちゃんは、日頃帯刀さんに勝てない何よりの証だろうか?
なんかそこまで嬉しがられると、こっちまで嬉しくなる。


「さぁ〜出来た。・・・可愛すぎる」


ギュッ



「凪?」


着せ終わったシロちゃんは想像を超える犯罪級の愛らしい姿になっていて、あまりの可愛さに我慢できずギュッ抱きしめ頬ずりをしてしまった。

ただでさえ尋常じゃない可愛さなのに、どこまで私を虜にしたら気が済むの?

私に抱きしめられたシロちゃんは突然の出来事に驚き声を上げる物の、どこかちょっと嬉しそうで尻尾を振る。
この姿はどこから見ても、猫・・・犬である?


「こんな可愛いなら、これからもいっぱい衣装作るから着てね」
「凪が望むのならいや凪が作った物ならば、我はなんだって喜んで着る」
「ありがとうシロちゃん。じゃぁ帯刀さんが来る前に脱いで私のと一緒に隠さないと」
「つまりそれは我と凪の二人だけの秘密だな」
「うん、そうだよ」


もっと眺めていたい気持ちを押し殺しそう言いながら脱がせていくと、ご機嫌になったシロちゃんはその日ずっーと鼻歌交じりだった。


勘の良い帯刀さんに疑われののされていたようだけれど、さすが神様なのかしらを切り続けていたようだ。






「これでよし。シロちゃんの着替えも終わったし、お菓子も持った。三人はもう終わったかな?」


支度が終わった私は三人のことが気になり、三人が支度している部屋に向かおうと部屋を出ようとした。

久しぶりに着る超ミニスカートに、パットを多めに入れ大きく見える胸。
さすがに魅力のない私でも、いくらか魅力は感じてくれるだろう。


「あっ、帯刀さん?」
「夕凪、着替え終わったみたいだね」


襖を開けるとそこには軍服姿の帯刀さんがいた。

帯刀さんは軍人さんか。


「恰好良いですよ」
「夕凪も似合ってる。だけど・・・」
「え、きゃあ!?」


何を着ても似合う帯刀さんに絶賛して帯刀さんも私も褒めてくれるけれど、何の脈略もなく襟ぐりから手を忍び込ませて胸を揉まれる。


「まったく・・・どうしてこう言う時に見栄を張ろうとする?夕凪の胸はこんな大きくないでしょ?」
「・・・いいじゃないですか?私だって大きい胸に憧れます」
「だからないものねだりは、駄目だって言ってるでしょ?」


もう少しで汚れた本能が支配しかける直前で、帯刀さんは止めてくれてでもパットは取られあきれながらそう私に言い聞かせる。
でも大きい胸は憧れているけれど、別にそんなペチャパイじゃないから欲しいとは思ってない。


「別に仮装なんですから、いいじゃないですか?もう」


帯刀さんからパットを奪い返し、文句を言いながら入れ直し乱れた服も整える。


「夕凪、魔女狩りは知ってる?」
「もちろんですよ」
「だから逮捕。今日は一日中この部屋から出たら駄目。分かった?」


突然話題を変えられたと思ったらいきなり手錠をされてしまい、訳の解らないことを命令され扉を閉める。

何が起こったの?


「え、そしたらお菓子がもらえないしご馳走が食べらるない」
「お菓子にご馳走と、私どっちが好きなの?」
「今はお菓子とご馳走・・・」


いつもの変な問いに正解は分かっていたにも関わらず、お腹が空いていたため視線を泳がせながらもわざと逆らった回答をしてみる。

お腹が空いては、何も出来ない。


「まったくどうして私の妻は、そういつも色気より食い気なの?」
「そう言われましても、お腹が空くのは自然の摂理でして、食べないと死にます」
「夕凪の場合は、食べ過ぎでしょ?」
「う゛っ、そそれは・・・」


機嫌の悪い問いに正論ぽい物を自信なく答えれば、痛すぎる図星をいつものように言われてしまいそれ以上は何も言えない。

確かに私は食べ過ぎです。


「少しは自覚があるみたいね。でもまぁ今日は特別に、これでよければ参加してもいいよ」

と言って私に付けた手錠の片方を、自分の腕に付ける。

これは一体・・・。


「帯刀さんはこれでいいんですか?」
「いいよ。これで妻の暴走は食い止められるからね」
「・・・分かりました。帯刀さんがいいのならいいです」


私にして見れば別に恥ずかしいことでもなかったため、そう意気込み帯刀さんに連行されたまま広間に向かうことにした。






「・・・凪、お前何をやらかした」
「龍馬さん、これは魔女狩りですよ。私達の国では、昔魔女は捕まえて死刑にしてたんですよ」
「魔女狩りね。なら凪の格好は魔女なんだな?」
「そう言うことになりますね」


広間に入るとそこには、海賊船長の龍馬と和服姿のアーネストがいて、私達を見るなりそんなことを話し始める。

つまりこれは、魔女狩りの再現だったのか。

「魔女と言う物は色っぽいんだな?凪から色気が感じる」
「まぁ確かに小松さんがただ面白いだけで、結婚するはずがないですからね。女性の魅力も持ち合わせているのでしょう」


完全に刺のある言い方で私を褒めるアーネストだったけれど、それでも私は嬉しくて顔の筋肉が自然と緩んでいく。

どうやら作戦は成功したようです。

しかし


「龍馬、サトウくん、あんまり妻を調子に乗らせないでくれる?夕凪が図に乗るとろくな結果にならないからね」
「相変わらず小松さんは手厳しいですね」

機嫌を損ねた帯刀さんのキツイ台詞に、アーネストは苦笑しそれだけしか言ってくれなかった。
せめて龍馬だけでも加勢して欲しいと思ってみたけれど、残念ながら彼の視線はもうご馳走に向けられている。

私の色気はご馳走に負けた。
まぁそれは私もだから、何も言えないけどね。
それにご馳走は、どれもおいしそう・・・。


「私はただ事実を言ってるだけ。そろそろハロウィンとやらを始めようか?妻と龍馬が待ちきれないようだ」
「ですね。始めましょう」
『やった!!!』


私と龍馬の声は綺麗にハモり、パーティーは始まるのだった。






「あれ、そう言えばシロちゃんは?」


ご馳走を一通り食べた後ようやくシロちゃんがいないことに気づき、辺りを見回しながらみんなに情報を求める。


「シロなら私に逆らったから、札に戻して封印したよ」
「え、そんな酷い」
「酷くない。私との約束を破るシロが悪い。あれほど私に隠し事するなと、いつも言い聞かせてるのに」
「うっ・・・それは私が・・・」
「何、まさか夕凪が関係してるわけ?やっぱり監禁しようか?」
「・・・それだけは勘弁して下さい」


酷すぎる帯刀さんの返答に口をとがらせ反論してみたけれど、それはあまりにも私に分が悪くシロちゃんには悪いとは思いつつ売ってしまった。


シロちゃん、ごめんなさい。
後でちゃんと罪は償いますから、許して下さい。



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