夢幻なる絆

□イベント短編
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凪、ホワイトデーに真実を知る。


※本編とは関係のない帯刀さんに片想い設定です。
  2章と3章の間ぐらいと考えて下さい。


「凪さん、ばれんたいんのお返しです」
「わぁ〜ありがとう。覚えていてくれてたんだね」


昼食の片付けの手伝いをするため勝手場に行くと、ニコニコの梅さんからそう言われ温かい包みを渡される。
思ってもいないプレゼントに驚く私だけれど、嬉しさは倍増で私の顔にも笑顔が浮かぶ。
バレンタインの時梅さんにも チョコ大福を上げて、その時ホワイトデーのことも教えた。
それを梅さんはちゃんと覚えていてくれた。


「どういたしまして。それで旦那様にはお返しをもらえましたか?」
「え、貰えるわけないよ。ホワイトデーを教えたの梅さんと龍馬だけだもん」


何かを期待している眼差しを向けられそんなことを聞かれるけれど、それはまったくの検討外れなことに笑いながら答える。
ホワイトデーを知らない帯刀さんがお返しをくれるわけないし、例え知ってたとしても私なんかにくれるはずがない。
だから私はわざと教えなかった。
教えたら期待して裏切られるだけだから。


「なら龍馬さんにはお返しして貰いましたか?」
「まだだけど、これから会う約束はしてるよ」
「そうなんですか。楽しみですね」
「うん」


今度は龍馬のことになり龍馬は前から期待しとけと言われていたから、梅さんの言葉にも素直に頷くことができる。

一体龍馬はどんなお返しをくれるんだろうか?
楽しいこと好きの龍馬のことだから、きっと私をびっくりさせることなんだろうな?
そう思うと楽しみだ。


「凪くん、これから私と出掛けるよ」
「帯刀さん?でも龍馬と約束が・・・」
「龍馬なら急用が出来た見たいだよ。それとも私と出掛けるのは、不満でも?」


そこへ帯刀さんがやって来てなんの脈略もなくそう言い切られ、嬉しく思いながらも龍馬との約束を優先させるが無駄だった。
でも内心龍馬に用事が出来たことに、喜んでいる酷い私がいる。


「不満なんかありません。じゃぁ着替えて来ますね」
「そのままでいい」
「え、あはい」


嬉しさが表に出ないよう考慮しながらそう言い自分の部屋に戻ろうとしたのだが、首根っこを捕まれ強引に引き留められる。
今着ているのは普段着用で龍馬と会うのなら構わないんだけれど、帯刀さんと出掛けるのなら話は別である。
せめて格好だけでもそれなりにしたかったのに、帯刀さんがいいと言うなら仕方がない。


「梅、夕食も外で済ませて来るから」
「はい、分かりました。いってらっしゃいませ」
「いってきます。梅さん」


変な期待をさせるようなことを梅さんに言い残し帯刀さんは玄関へと向かい、私も物分かりのよい梅さんにそう言い後を追う。

夕食も外でと言うことは、夜まで二人っきりでいられる?
いくら帯刀さんがホワイトデーを知らなくても、私にとって今日は特別な日。
その日にこんな夢見たいことが、現実に起きていいの?





「ねぇ凪くん、私との約束ちゃんと覚えている?」
「え、なんでしたっけぇ?」
「私以外の異性にあげても貰ってもいけないってこと」
「そう言えばそんな約束しましたね」


帯刀さんと歩いていることしばらくしていきなり問われて戸惑う私に思い出さしてくれたのに、まだ私はどこか他人事のような反応で返す。
あの時はその場のムードみたいな感じに流されちゃったけれど、よくよく考えればそんなの帯刀さんには関係がない。


「しましたね。ってだったら約束は守りなさい」
「私は帯刀さんの妻でも恋人でもないんですから、誰にあげても貰っても帯刀さんには関係がないと思います。私だって恋愛するのは自由です」


あっさりしている私に帯刀さんは呆気にとられ忠告されるが、それでも私は強気な態度で自分の考えを主張する。
そんな約束無効だ。


「つまり凪くんには、好きな人いるんだね?」
「そりゃぁまぁ・・・いますよ。でも今の所告白しない予定です」


ニヤリと帯刀さんは笑い核心をつかれてしまい、私は視線を泳がせながらも正直に小声で答えた。
嘘を付いても確実にバレだろうし、このぐらいだったら答えても支障はない。


「そう。凪くんは意外に恋愛に関しては、消極的なんだね?・・・おまけに鈍感で無自覚だから苦労する」
「今はまだこのままでも幸せだからいいんです。振られたら今の関係が崩れて、顔だって合わせづらくなります。そんなの絶対にイヤだ・・・」
「確かにそうだね。でも私はそうではない。好きなったら、好きになってくれるまで諦めないよ」
「帯刀さんが本気になれば、どんな女性でもイチコロですね」


いつの間にかお互いの恋愛感の話になってしまい、いかにも帯刀さんらしい考えに笑ってそう言葉を返す。

きっと帯刀さんには失恋する気持ちなんて、分からないんだろうな。
だからそんな強気なことが言える。


「今回は大分てこずったけれど、ようやくそれが実り始めたよ」
「え、帯刀さんって好きな人がいるんですね・・・」


初めて聞かされた帯刀さんの想いの人がいた事実に、ショックを隠せず幸せな気持ちがガクンと沈む。

それぐらい分かっていたはずなのに、実際は全然分かっていなかったんだね。
分かっていたら、帯刀さんの誘いなんて乗らなかった。
なんで私は今こうして、帯刀さんと二人だけで出掛けてるんだろう?
・・・駄目だ。
このままだったら泣き崩れて、帯刀さんに私の想いを知られてしまう。


「凪くん?」
「なら帯刀さん、今日はその人と過ごしたらどうです?未来の今日はそう言う日なんですよ。だから・・・私は帰りますね」


私の異変に気づいた帯刀さんは私の顔を心配そうに覗きこまれたけれど、私は精一杯笑いながらホワイトデーの大まかなことを伝え別れようとした。

失恋してもこの想いに気づかれなければ、私はまだ帯刀さんの近くに居られる。
それだけで十分なはずなのに、胸が苦しくて辛い。
私は帯刀さんの彼女になりたいの?
そんな考え図々しい。
私なんかが帯刀さんの彼女になれる・・・


「駄目。今日は私と過ごさないと」
「え、でも・・・」


そんな私の腕を強く掴み、行くことを却下し強制する。

私は帯刀さんのことを思って言っているのに、気づいてくれない?
そんな帯刀さんは鈍感じゃないはず。
じゃぁなんで?


「・・・私は貸し借りが嫌いでね。今日のことは梅から聞いた。だからこれはそのお礼だと思ってくれればいい」
「別にお礼なんて良いですよ。そう言うつもりであげたわけではないんですから・・・」


帯刀さんの言い方が冷たくてますます涙が溢れてもグッと堪え、私は意地になってそれを突っぱねた。

本当にこれ以上ここにいたら、確実に破滅して惨めな思いをしてしまう。
もう帯刀さんの近くにいられない。
それだけは勘弁して欲しいのに、どうして帯刀さんは無神経なことばかり言うのだろう?


「・・・。だったらこれならいくらなんでも、凪くんにも分かるよね?」
「え?」
「これが私の気持ち」

呆れきった帯刀さんはため息交じりながらも意味深なことを言って、私に近づいたかと思うとそっと私の唇は塞がれ強く抱きしめられる。
それは信じられない物だった。

私今帯刀さんとキスをしてる?
しかもこれが帯刀さんの気持ちってことは、間違いなく私のことが好きってことだよね。
凡人以下の私を好きだなんて嘘みたい。

堪えていた涙がドッと溢れ出すけれどこれはうれし涙で、私も帯刀さんを強く抱きしめる。
初めて私の想いは伝わったんだ。


「私も帯刀さんが大好きです」
「ようやく分かってくれたようだね。・・・大切にしてあげるから、ずっと私の傍にいなさい」
「はい。それで帯刀さんは私に何をくれるんですか?」
「私が持っている物すべてあげる」
「すすべて?」


そうなるとお返しが気になり甘えるように尋ねてみれば、それは物凄いことで思わず咳き込んでしまう。

思いが伝わった途端、すぐにそう言う展開ですか?
確かに私達は立派な大人なんだし、帯刀さんは経験豊富と来ている。
お互いの合意があればなんの問題はない。
だけど私には何かもが始めてのことだから、出来ればゆっくりと育てて行きたい。


「冗談。夕凪のために着物を仕立てさせた。それに料亭を予約してある。それでいい?」
「十分過ぎます」


からかわれていたのか笑われ今度は豪華な内容を言われ、文句なんかない私は笑顔で頷き喜ぶ。
私のために着物を仕立ててくれるなんて、さすが帯刀さんだ。


「なら行こう。夕凪」
「はい」


と差しのべられた帯刀さんの手を私は掴み、さっきよりも二人の距離を縮めて歩きだす。



ねぇ帯刀さん。
これから私達は、どんなカップルになるんでしょうね?





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