夢幻なる絆

□イベント短編
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凪、雛人形をもらう。





「夕凪、何も聞かずに来なさい」
「はい。シロちゃん達もいいですか?」
「ああ、構わない」


春の陽気をのほほんと感じながら、縁側で一服していた昼下がり 。
すこぶる機嫌の良い帯刀さんがやって来てそう言うから私は立ち上がりダメ元で訪ねれば、珍しく許可されシロちゃん達も嬉しそうに起き上がる。


「帯刀、感謝します」
「一体どう言う風の吹き回しだ」
「明日は雪が降るのではなかろうな?」
「クロとシロは私に喧嘩を売ってるの?いいんだよ来なくても」


よせばいいのに二人は余計なことを言って、帯刀さんを怒らせる。
それでもまだ今回は、言葉だけですんでいい方だ。


「クロとシロは相変わらず学習能力に欠けていますね」
「嬉しいんだから、素直に喜べばいいのに」


唯一おとがめのないシュウちゃんと三人のやり取りを眺め、呆れながら言い合い溜め息を付く。
私としては仲良くしてくれれば嬉しいのに、それは無理なこことなんだろうか?
原因が私にあるだけに、申し訳ない気持ちで一杯だ。
でも私は帯刀さん愛しているから、三人を平等にすることは出来ない。


「夕凪、行くよ」
「あ、はい」


もう口論するのを止めたのか帯刀さんはそう言い、私の手をきつく握り先へと急ぐ。








「うわぁ〜きれい」
「これは私からの愛しき妻への贈り物。どう気に入ってくれた?」
「もちろんです。ありがとうございます帯刀さん!!」


私の部屋から一番離れた部屋に連れられ入ると、そこには立派な七段飾りの雛人形が飾られていた。
すっかり忘れていたけれど、今日は上巳の節句の雛祭り。
実家にある七段飾りの雛人形もそれなりに豪華だけれども、それでもこれには叶わないと思う。
すべてに命が吹き込まれているようで、今にも動き出しそうな雛人形達。
帯刀さんのことだから、きっと有名な人形師が作った高級品なんだろうね。
私のためだけに買ってくれた雛人形なんだから、もっと間近でじっくり見よう。


・・・あれ?


お雛様とお内裏様を見た瞬間私はあることに気づき、マジマジと見つめあまりのことに驚く。
二体は、私と帯刀さんとどこか似ている。


「どうやら気づいたみたいだね?そうだよ。この男雛と女雛は私と夕凪を手本として作らせたんだよ。普通の雛人形を贈るなど芸がないでしょ」
「帯刀さん、大好き!!」


それは気のせいではなく本当のことで誇らしげに言う帯刀さんに、私は更に嬉しくなり帯刀さんに抱きつき感謝の気持ちを込めてキスする。
そんないきなりの私をちゃんと受け止めてくれ、そのキスはディープキスとなった。
いつも帯刀さんのサプライズプレゼントは、私を驚かせられ喜ばせてくれる。


「まさか帯刀はこれを見せつけるため、我らも呼んだのではなかろうな?」
「小松帯刀ならありえる話」
「ですが凪はとても幸せそうですよ」
「シュウはそれでいいかも知れないが、私とシロはそうではない。滅茶苦茶悔しいのだ」
「だな。いくら小松帯刀が凪の夫であろうとも、そうやって見せつけるなど万事千万なこと」
「・・・・・・」


すっかり忘れていて静かだったシロちゃんとクロちゃんは激しい嫉妬を漂わせて、シュウちゃんを捲き込んで激しい口論のようなものを始め出す。
その内容は明らかに人前でなにイチャイチャしていると言われていて恥ずかしくなった私は、反射的に帯刀さんから離れようとしたらそれは許されず耳を塞がれディープキスは深くなる。

私と違って帯刀さんは確信犯。
シロちゃん達が言うようにわざと見せつけ、私が自分の物だと分からせていると言った所だろう。
そんなことしなくても、十分過ぎるくらい分かってるのに・・・。
子供じみた私が言うのもあれだけれど、たまに帯刀さんって子供っぽいんだよね?
でもそんな帯刀さんも私は好き・・・と言うかどんな帯刀さんでも好き。

だからもう少しだけ、帯刀さんを感じていたい。



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