夢幻なる絆

□5.抗う覚悟
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「凪、お願いだから、御家老の亡骸を俺達に渡してくれないか?」
「帯刀さんは、死んでないです。ただ寝てるだけなんです」
「・・・凪、お前は御家老の正妻だろう?だったら正妻らしくしたらどうだ?」

何かが壊れた私は帯刀さんの死が受け止められず帯刀さんの亡骸を大切にしていて、西郷さん達を困らし怒られる日々が続いていた。
部屋には死臭が漂って誰もが顔をしかめているのに、私はそれさえもいい匂いだと思えずーと傍にいる。
傍にいないと取られてしまうから・・・。

なんでみんなは帯刀さんをが死んだと思ってるんだろう?
ただ寝てるだけなのに、みんなおかしいよ。

「ちゃんと私正妻らしくしてるます。毎晩か欠かさず帯刀さんを癒してるし、今夜だって・・・」
「おい、凪。お前まさか亡骸相手にちぎりをやってんのか?」
「当たり前じゃないですか?だって私達夫婦なんですよ」
「・・・すまん、凪。これ以上このままにしてたら、体を壊して死んでしまう」
「え、やだ。返して」
「奥様、しっかりして下さい。奥様の気持ちはよく分かりますが、こんなことばかりしていたら旦那様が悲しむだけです」

私の生命の危機を感じたのか西郷さんはいつもならここで一端引き上げるのに、今日は最初にそう謝罪した後私から無理矢理帯刀さんを引き離しどこか別の所へ持って行こうとする。
もちろん必死に抗って帯刀さんを奪えかえそうとするが、涙ながらの梅さんに押さえ込まれ何も出来なかった。

壊れてしまった私と心。
もう何を言われたって、何も感じないし何も響かない。
生きているけれども、もう死んだと同じ・・・。

「返してよ。返してくれなかったら死んでやる。そしたら目を覚ました帯刀さんに怒られるのは、西郷さんと梅さんなんだからね」
「・・・奥様・・・」
「凪いい加減にしろ。御家老は死んだんだ。ちゃんとこの現実を受け止めて、これから先強く生きて行かなきゃ駄目なんだ」

言葉で思いっきり大好きな人達を罵って梅さんは悲しみようやく私を解放してくれたけれど、代わりに部屋を出ようとした西郷さんすごい剣幕で私の胸ぐらを掴み壁へと押しやる。
そしてまた訳の分からないことを言って、怒鳴り怒られる。

帯刀さんは死んでない。
大体私は強くなんかない。
何かあるとすぐに心が折れて、楽な方に逃げてしまう。
そう言う最低な女性なんだ。

「西郷さんは何も分かってない。帯刀さんなら私のすべてを分かってくれる」
「ああ、今のお前なんか少しも分からないいや分かりたくないね。俺の知ってる小松夕凪は、いつも失敗ばかりしてるがそれでも呆れるぐらい前向きで、御家老のことを誰よりも慕っていてどんな時でも一番に御家老のことを考えてた奴だろう?」

初めて聞かされて西郷さんの私へ対する印象。
そんな風に思われてたんだ。
でも今はそんなこと西クさんに何を思われてようが関係がない。

「そうだよ。私は帯刀さんのこと世界で一番愛してる。ずっーと傍にいたい」
「・・・一晩だけ御家老をお前に返す。良く考えて、今の状況を理解しろ。そして御家老にとって、一番良いと思うことをしてみろ。梅さん、こんな奴などほっといていくぞ」
「あ、はい。ここに旦那様の奥様宛の遺書を置いておきます・・・では」

ついに私に愛想をつかした西クさんは呆れきってそう言い捨て、帯刀さんを私に返してくれ梅さんと一緒に部屋から出て行ってしまった。

帯刀さんにとって、一番良いと思うこと?
そんなの私と一緒にいることに決まってるじゃない。



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