夢幻なる絆

□5.抗う覚悟
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ドシャガシャ〜ン


「ちょと誰よ。こんなとこに荷物なんて置いたのは・・・」
「ミャァ〜・・・」
「あ猫ちゃん久しぶり。元気がないようだけれど、どうかしたの?・・・え?」

運が悪かったらしく荷物の中に不時着してしまい頭と腰を打ち痛い思いをして愚痴っていると、いつも通り猫ちゃんが迎えに来てくれるがすっかり鬱ぎ込んでいて元気がまったくない。
しかも帯刀さんとシロちゃんはどこにもいなく、辺りを見回すと何かがおかしいことに気づく。
ふっとイヤな予感が、頭の中を過ぎる。

・・・何このとてつもなくイヤな胸騒ぎは?

「猫ちゃん、帯刀さんとシロちゃんは?」
「・・・ニャァン」

聞いても何も分からないのに聞いてみれば、ますます元気のなくし虫の音のような返事が返ってくる。
イヤな胸騒ぎはどんどん増して、不安だけが積もっていく。

「・・・奥様?」

そんな中さっきの音で異変を感じたのか梅さんがやってきたが、私を見つけるなりなぜか唖然と見つめる。
それはまるで予想もしてないぐらいの驚きのようだった。
梅さんは私が未来人だってことも行き交うことも知っているから、そんなリアクションはおかしい。

「梅さんまでどうしたの?ねぇ帯刀さんとシロちゃんは?」
「奥様・・・落ち着いて聞いて下さい・・・旦那様は・・・」
「?帯刀さんが、どうしたの?」

勝手ないほどの梅さんの真顔で、何か飛んでもなく恐ろしい真実を口にするような口調。
私は思わずつばを飲んだ。

イヤだ。
それ以上聞きたくない。
それを言葉にしないで。

心の奥底で無意識に訳の分からないことを叫び、何かに脅えている。

それって一体何のこと?

「旦那様は昨夜お亡くなりになりました」
「・・・は?」
「詳しいことは聞かされていませんが、何者かに殺されたそうです」
「・・・じょ冗談言わないで。なんで帯刀さんが死んだりするの?梅さんも人が悪いな・・・」

あまりにも破壊力抜群な言葉に私の頭には理解出来ず拒否してどっきり扱いするが、そう言葉を返す中大粒の涙がこぼれ胸が締め付けられる。
悲しい物ではない。
胸が締め付けられたと思えば、今度は張り裂けそうになる。
息もうまく出来ない。
最愛の人を失うと、こんな気持ちになるんだ。
頭では理解できなくても、心では理解出来たらしい。

「奥様、気を確かにして下さい。奥様がいなくなった約二年間。旦那様は表向きいつもと変わらないご様子でしたが、随分苦しんで悩まれていたんだと思います」
「二年?私二年も来なかったの?」
「ええ、今は慶応二年一月です」
「・・・けいおん・・・にねん・・・・?」

私をどこまで追い詰めたいのか更なる過酷な現実を教えられた瞬間、私の何かが一瞬でもろくも壊れていく。

受け入れられない現実。
これ以上もう何も考えたくなかった。
こんな現実も受け止めたくない。

・・・受け入れなきゃいいんだ・・・


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