夢幻なる絆

□5.抗う覚悟
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「なんで?」
「え?」
「帯刀さんは私の妄想の人なのに、なんで写真があるの?・・・あれは現実?」

アルバムをペラペラめくり見てみると、どれも私が幸せだった妄想である記憶の写真・・・。
これ以上傷付かないように封印しいた記憶が色鮮やかに蘇り、目がらしが熱くなり大粒の涙が次々と溢れ零れる。

帯刀さんに今すぐ逢いたい・・・。

「姉貴一体どうしたんだよ?まさか別れた彼氏とかじゃないだろうな?」
「ううん、この人は私の旦那さん。信じてもらえないと思うけれど、私は幕末と遙か5に似たパラレルワールドに何度か行ってたの」

いきなり大泣きする姉を心配し禁句を言ってしまったんじゃないかと焦りまくる弟に、ネジが一本はずれた私は馬鹿正直に誰にも言ったことがない真相を話してしまった。
こんな事言っても頭がおかしい人だと思われるのは分かっているけれど、もう私にはこの感情を抑えることは出来ない。

あれは誰がなんと言おうと現実なんだ。
遙か5に似た世界だって、別に構わないじゃない?
小松帯刀は確かに存在する。
それだけで良いはずなのに、私は何をそんなに捕らわれてたんだろう?
なんでそんな簡単なことに、今まで気づかなかったんだろう。

「姉貴、ちょっと落ち着け。信じるから一から話してくれよ」
「・・・信じてくれるの?」
「こんな写真見せられたら、信じるしかねぇだろう?大体姉貴は嘘がつけないからな」

意外すぎる弟の反応に私の涙はピタリと止まりキョトンとして聞き返せば、あの優柔不断で情けないはずの弟が柄にもなく格好良いことを言って笑う。
この弟にならすべてを話しても言葉通り信じてくれると直感した私は、今までのことをすべて話すことにした。






「そうか。通りでこの所の姉貴の様子がおかしいと思ったよ。俺もお袋達も心配してたんだぞ」
「・・・ごめん。いきなりそれはゲームの世界だったと思ったら、現実逃避しかできなくて。・・・怖かったんだと思う」

私の話を熱心に最後まで聞いてくれた弟は、信じがたい真実なのにやっぱり疑うことなく信じてくれネタバレし安堵する。
すべてを話したことで私も心の整理が落ち着いて出来、その時の心境はそうじゃないかと思えてくる。
今まで過去だとばかり思っていた世界が、実はそうじゃなくゲームで存在している二次元。
それで馬鹿な私の頭はパニックを起こし、妄想だと無理矢理結論づけていた。
なのに遙か5を購入しても今まで放置していたのは、心の奥底では妄想だとは受け入れられず拒否反応を起こしていたのかも知れない。

「だけど姉貴はこの遙か5って言うゲームは知らなかったんだろう?しかもこんな証拠も揃っているのに妄想にするなんて、いかにも姉貴らしい誤解だよな?」
「そうだね。私もそう思う。この四ヶ月行けなかったのは、心の問題とタロット占いをしなかったから。だから今夜は絶対に行けると思うんだ」
「ああ。それでこそ姉貴だよ。その帯刀だって、きっと姉貴に逢いたがってると思うぜ?」
「だといいけどね。じゃぁ早速タロット占いをしますか?」

何かがようやく吹っ切れた私は以前の無駄に明るく前向きな私に戻りそう言って、机の引き出しの奥に閉まったタロットカードを取り出した。



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