夢幻なる絆
□5.抗う覚悟
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遙かなる時空の中で
それは日本史を題材したアドベンチャー系の乙女ゲーム。
乙女ゲームとしてはかなり人気があってCD・書籍・イベントなどがあるらしい。
私が今まで行き交い過去だと思っていた幕末の世界は、5その物のでつまり偽りの世界。
本来なら私が行けるはずのない世界だった。
なのに私は行って・・・もしかしたらすべてが私の妄想だったかも知れない。
かんざしと結婚指輪は、実は私が無意識のうちに買った物。
そう私が無理矢理結論づけてもう考えないように決めてから、もうすぐ四ヶ月が過ぎようとしている。
ネタを知ってしまったからなのか、あれからもう私はあの妄想をすることはなくなった。
ただどう言う訳か結婚指輪は、まだ外せていない。
それに以前のご気楽で前向きな私には戻れそうもなく、何もやる気が起きず休日は魂が抜けたようにただ何もせず何も考えないで一日を過ごしている。
きっともう元の私には戻ることはないだろう。
だって私は本当も何もまだ・・・・・。
「・・・姉貴、姉貴ってば」
「え、何?」
「なんだよまた人の話聞いてなかったのかよ?」
「ごめんごめん。ちょっと考え事してて。だって弟に結婚を先に越されるんだから、姉として立場はないしショックだからね」
弟の結婚式が一週間後に迫ったある日弟が泊まりたいと言いだし、姉弟二人だけの酒盛りの最中弟の声に我へと返り適当な言い訳をして笑う。
またいつもの癖で、ボーとしてしまった。
「だったら姉貴も彼氏と結婚」
「私に彼氏なんかいるはずないじゃん。この前のはあんたを説得するための、嘘だって言っているでしょう?ああでもしなきゃあんた間違えなく彼女に中絶させてたじゃない?」
「そそれはそうだな・・・。その節は、ありがとう・・・」
「分かってくれて、良かったよ」
思わぬ所で墓穴を掘って窮地に立たされそうになったけれど、相手が弟だから楽に交わし逆に感謝までされる。
今や弟は私に頭があがらないらしく、姉として敬うようになってくれた。
私も弟が男になってくれて思いが伝わって、本当に良かったと思う。
「所で姉貴もこんなゲームやるんだな。あいつもこう言うゲーム好きなんだぜ」
「ああ、歴史を題材したゲームだったから興味があって買っては見たけれど、やっぱやる気は起きなくてまだ開封もしてないけれどね」
話題を変えたかったのか本棚に行き未開封の遙か5のソフトを見つけるなり意外そうに問われ、私は表上そんなに気にしていないように軽く訳を答え受け流す。
確かにギャルゲー萌え系オタクである私には乙女系なんて無縁すぎる物であり、実際に今までまったく興味をそそられなかった。
「ふ〜ん。・・・あれなんか落ちた。アルバム?」
弟が遙か5を取り出すと一緒に見覚えがあるアルバムが落ち、遙か5よりそのアルバムが気になったのか無断で中を見始めた。
「やっぱり姉貴彼氏いるんじゃん。しかもすげぇイケメンだな」
「え・・・」
「えって、なんでそんな驚くんだよ?これ彼氏じゃないのか?」
と弟はアルバムを見ながら訳の分からないことを言いだし、驚く私にムッとする弟にアルバムを叩き付けた。
それは存在するはずのない、私と帯刀さんの結婚式の写真。
今ではけして出来ない満天の笑顔を浮かべている。