夢幻なる絆

□5.抗う覚悟
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「・・・凪。小松帯刀の傍にそんなに行きたいのなら、運命そのものを変える気はあるか?」
−え、運命を変える?
「さよう。ここは時空の狭間。凪にその覚悟があるのならば、我は凪が望む時空に連れていく」
−本当に?だったら私を帯刀さんが生きていた時空に連れていって。

考えられない都合のいい話に私はよく考えず飛びつき、都合のいい私の望む時空を指定してみるけれど、

「ただし運命を変えると言うことは、生半端な覚悟では通用せん。今より傷つき何もかも命さえも失うかも知れん・・・それでもよいか?」
−・・・・・・。

世の中やっぱりそんなに甘くはなく厳しい現実を突き付けられ、私はまともに受け止め再び絶望に飲み込まれそうになる。

生半端な覚悟じゃ駄目。
今より傷つき、何もかも命さえも失う・・・。

別に自分の命を失うのはどうでもいい。
私の命で帯刀さんを助けられるのなれば、私は喜んでこんな価値もない命を差し出す。
でもすべ・・生きている帯刀さんを失うことになったら、私のそれからの人生今よりも生き地獄になると思う。
それに良く考えたら何も出来ない私になんて、運命はきっと変えられず同じ運命をたどるだけ。
そしたら潔くここで死んだ方が良い・・・。

「何もやらず諦めても良いのか?そなたにとって小松帯刀とは、その程度の存在でしかないのか?」
−しょうがないじゃん。何も力を持たない私が頑張っても、運命なんて変えられないぐらい分かるでしょう?
「凪には特別な力があるだろう?その力で青龍・朱雀・玄武の呪詛を払い白龍の神子・八葉の協力をすれば、きっとそなたが望む明るい未来が待っておる」

今まで見せたことのない私を軽蔑するシロちゃんにも、私はまた後ろ向きなことばかり言って自分を守ろうとする。
これだけ言えば普通の他人なら完全に私を見離し去っていくのに、シロちゃんは見離さず私に出来ることを教えてくれ救いの手を差し伸べる。
今さっき言ったことと違う。
やっぱりシロちゃんも、私には劇甘なのかも知れない。

−だけどやっぱり私には重荷だよ。
「凪は一人ではない。まずは小松帯刀に今起こったことをすべて話し、協力してもらえ。もちろん我も、協力しよう」
−帯刀さんは信じてくれると思う?
「凪の言葉であれば、小松帯刀は何一つ疑わない。愛する者の言の葉は、例え嘘であっても信じる物だろう?」
−そう・・だよね?うん、私やってみる。

それでも勇気を持てず後ろ向きの私にシロちゃんは嬉しいことを言ってくれ、単純な私はそれでやっと自信と勇気を持つことが出来た。
すると動かなかった手足が自由に動かせ、私はシロちゃんを久しぶりにギュッと抱きしめる。
暖かいシロちゃんの温もりで、帯刀さんほどではないけれど心地よい。

「それでこそ、我の愛しき人の子夕凪よ」
「ありがとうシロちゃん。私本当に頑張るから、絶対帯刀さんもこの世界も守ってみせるからね」
「ああ。その調子だ。では行こう。凪が本来行くべきはずだった時空へと・・・」

私なりの今決めた決意を言葉にするとシロちゃんは本来の姿に戻り、私を乗せすごい勢いで時空の狭間を駆け抜けていく。




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