夢幻なる絆

□5.抗う覚悟
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ここは、どこ?
私は死んだの?
だったら私の愛する人は、どこにいるの?

気がつくと真っ暗い闇の中を浮いているようで、体を動かそうとしてもまったく動かない。
以前シロちゃんを助けた時に彷徨った場所とは異なる場所だと思う。
寒くもなければ、暑くもない。
音もない。
何も感じない・・・。

「・・・凪、凪・・・」

だと思っていたら聞き覚えのある声が、懸命に私の名を呼んでいるのが聞こえた。
残念ながら私が一番求めている人の声ではない。
その声に返事をしたくても、なぜか声が出せず何も反応が出来ぬまま。

「凪、我を忘れたのか?シロだ」
−シロちゃん?
「そうだ。・・・やっと見つけた。我の愛しき人の子よ」

声は消息不明となっているシロちゃんで私の心の声に反応してくれ、安堵した声でそう言い姿を現し私の傍に寄り添う。
なんだか随分弱っていて、苦しそうに見える。

−シロちゃん、一体何があったの?
「我ら四神と龍神に呪詛を掛けたのは時空の狭間の神だった。彼はそれだけではなくこの世の神を殺し始め、白き龍神は呪詛を掛けられながらも白龍の神子を選びこの地に召喚させた。しかし残念ながら龍神の神子を守るはずの八葉は、八葉になることをを拒み続けた。特に最初から自分が八葉であることを知っていた小松帯刀は、白龍の神子を敵対し相手にしてなかった。なのにあろうことか我を白龍の神子に譲った」

次々と明かされる空白の二年間に私は不謹慎かもしれないけれど、帯刀さんが八葉にならなくて良かったと思った。

ちゃんと私との約束守ってくれたんだね。
シロちゃんのことは守ってくれなかった見たいだけれど、こうして今私の元に戻ってきてくれた。
だけど話はこれだけではなかった。

「白龍の神子は狭間の神に騙され四神の札を集め浄化するのだが、あっけなく四凶にすり替えられ、狭間の神の暴走を止られず。我以外の四神は消されてしまい、世界は滅びの道を歩み始めた・・・」

ここでようやく説明が終わる。
あまりにも残酷な結果だったけれど、私にとっては予想通りのこと。
頼みの綱だった龍神の神子は役立ずだったらしい。

やっぱり世界は滅びるんだ。

−これで私はやっと帯刀さんに逢えるんだね。もう二度と離れない。
「凪はこんな運命を受け入れると言うのか?」
−うん、そうだよ。私には帯刀さんが必要なの。いない世界なんていらない。ましては二次元キャラでしかない元の世界になんて戻りたくない。

生きる希望をなくした私はシロちゃんの疑う問いに、二つ返事で返し心のままに迷いなく告げる。

私の世界でも私はもう生きていけない。
二次元キャラの彼に本気で恋をしても、彼は私を知ることなく龍神の神子だけを愛し続ける。
いくら声や姿を見たくて求めても、きっと私はその度辛い思いをするだけ。
私以外の女性に、愛を囁いて欲しくない。
でも所詮二次元キャラなんて、魂を持たない残酷な紛い物。



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