夢幻なる絆

□リアルワールドへようこそ
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凪、試される。


「夕凪もがんばったんだね」
「まぁお腹さえ隠せば、私だってなんとか見せられますからね」
「夫として妻にここまで色気がないと、あらゆる意味で安心する」
「・・・・・・」


一生着ることなんてないと思っていたお腹をごまかせるビキニを着て、帯刀さん達との待ち合わせ場所に行くなり会話。
相変わらずトゲがある言い方でグサッと来るのに、なぜかそれで帯刀さんはご満悦のご様子。
そう言ってくれるの彼や夫は、帯刀さんぐらいだろう。
大半は色気を求め、他人に自慢したいはず。

それにくらべて帯刀さんは、色気も魅力もりすぎです。
この分だと、逆ナンされまくるんだろうな?
そしたらいくら帯刀さんでも、今日は水着だから危険だよね。
だから私もビキニで対抗したつもりだったんだけれど、よく考えて見れば私なんかが対抗出来るはずないよね。


「そう言えばシロちゃんは?」
「邪魔だから、途中声を掛けてきた女性達に預けたよ」
「あ預けてきたって、子供じゃないんですから」


今更シロちゃんがいないことに気づき辺りを見回しながら尋ねれば、あまりにも粗末な言い方で機嫌よく答えられる。

確かにここ最近三人での行動が多くて、邪魔物扱いしていたのは知っていたけれど。
何もそこまで言わなくてもいいのでは?


「だけど女性達は喜んでたし、シロもまんざらではなかったよ。若くて綺麗で色気もある女性達だった」
「へぇ〜そうなんですか?」
「ずいぶん冷静な反応だね」
「シロちゃんの恋愛は自由ですからね。シロちゃんが楽しいんなら、それでいいと思いますよ」


真相に納得する私の反応に帯刀さんは不可思議問われありのままを答えると、それは求めていた正しい答えだったのか満足そうに笑みを浮かべた。
よく分からないけれど、帯刀さんが満足そうで何よりである。


「ならこれにはどう反応してくれる?正しい反応したら、今日一日夕凪のしたいことに付き合うから。ただし間違ったらそれなりのお仕置きをするからね」


と試すように言って、私に一枚の紙を渡す。

それは浜辺キングクイーンを決めるコンテストのチラシ。
帯刀さんがこう言うのに興味があったんだと意外に思いながらよく読めば、優勝賞金五十万円と書いてある。

・・・お金が欲しいとか?


「帯刀さん、出場したいんですか?」
「そう」
「・・・賞金目当てですよね?」
「それ以外にないでしょ?これだけあれば、夕凪が望む結婚式を挙げられるからね」


真意は不安に思うことなどないぐらいあっさりした言い方をされ、しかもそれは私の夢を叶えてくれるためだった。
嬉しさのあまり思わずいいよって言ってしまいそうになったけれど、さらに詳しく読んだ私はとてつもなく嫌な気持ちになってしまう。


「絶対にダメです。参加して欲しくないです」
「そしたら結婚式挙げられないよ」
「それでもいいです。帯刀さんの隣は、私だけの場所です」


人混みの中にも関わらず私は無茶苦茶わがままを言って、帯刀さんのことを力強く抱きしめる。
チラシにはキングとクイーンになった人達は、花火大会の式典に出て特等席で鑑賞と書かれていた。
帯刀さんが優勝するとは限らないけれど、少なくても帯刀さんのファンが付くだろう。
そんなことになったら、私の立場はない。




「はい。大変よく出来ました」
「え?」
「私は悪いけれど、こんな大会にはまったく興味がない。出場する時間を夕凪と過ごす時間に充てた方が、よっぽど有意義な過ごし方だとは思わない?」
「まぁそうですね。じゃぁなんで?」


そんな私を怒ることなく考えを一転させ、私を抱き返して頭をくちゃくちゃになぜてくれる。
うれしいことでも、あまりの急変ぶりに私を悩ます。


「夕凪の私への愛情がどのような物か、知りたくなっただけ。こうでもしないと分からないからね」
「・・・だったらもし私が大会を許可してたら、帯刀さんどうしましたか?」
「結婚指輪を外して出場して夕凪の嫌がる行為をやり続け、最後の仕上げに・・・朝帰りしてたよ」
「我慢しなくて、本当に良かったです」


世にも恐ろしいお仕置き内容に、怒ってもいいはずなのに体中の力が抜け涙がドッと溢れ出す。
聞いただけでも十分にお仕置き効果は大なのに、本当にされたら間違いなくおかしくなって壊れていた。


「本当に今日は愉快だね。いつもはそんなに感じない妻の愛情を、今はこれ以上もないぐらい感じている。約束通りこれからは夕凪に付き合うよ」
「ありがとうございます。なら早速泳ぎに行きましょう?」
「そうだね」


今までにないぐらい超ご機嫌な帯刀さんがそう微笑み言ってくれたから、私は涙を拭き元気いっぱいにそう答え帯刀さんの腕を掴み海まで走りだす。

だけど私ってそんなにうまく愛情を注げてないんだろうか?




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