夢幻なる絆

□リアルワールドへようこそ
5ページ/12ページ

凪、帯刀さんに嫉妬をする。




「帯刀さん、ソフトクリーム買ってくるので、ここでちょっと待っててくださいね」
「・・・夕凪はどこ行っても食べてばかりだね。だからいつまでたってもくびれが出来ないんだよ」
「う・・・それは・・・」


真夏らしく炎天下を歩いているとたまたまソフトクリーム屋さんを見つけた私はそう言い買いに行こうとすると、帯刀さんに痛すぎることを耳元で叩かれお腹の贅肉を軽くつままれ笑われる。
何もかもがごもっとで、私は考え直す。

帯刀さんはやっぱり女性らしいスリムな体が好みなんだろうか?
いくら体重が標準でも、くびれを作る部分ダイエットをしないとダメ?


「冗談。いいよ買ってきても。私もそのそふとくりーむとやらを、食べてみたいからね」
「だけどそしたらくびれが、いつまで経っても出来ませんよ」
「今のままでも満足してるから、気にしなくてもいいよ。これ以上夕凪に完璧を望んだら、罰が当たりそうだしね」
「・・・なら行ってきますね」


微妙過ぎるまるで飴と鞭の言い方をされ、私は肩をガクリと落としトボトボとソフトクリーム屋さんに向かう。
つまり帯刀さんはやっぱり女性らしいスリムな体が好きだけれど、私にはそれを望めないから諦めたと言うこと。
それでも愛してくれているのは嬉しいんだけれども、それに甘えて私はいいんだろうか?






「あれ、いつの間にか女性の人だかりが出来ている。なんかとっても嫌な予感・・・」


ソフトクリームを買って帯刀さんの元に戻ろうとすると、その場所には若い女性の人だかりが出来てみなさんやたらテーションが高かったりする。
その光景は夢の屋さんの時と同じ・・・。
きっと女性達の中心は帯刀さんだろう。

すみません。
とてもじゃないけれど、私にはこの中に入っていく勇気はないです。
・・・ちょっとで様子見しよう。


「あの人、すごく格好良くない?」
「うん。モデルかな?だとしたらファンになりそう」
「だよね」


ある二人組が目をハートにして、会話に花が咲いていた。

どこへ行っても帯刀さんはモテていて、傍にいる私はいつだって睨まれる。
それでも帯刀さんは家老だからそれだけですんでいるんだけれど、ここではどうなるんだろうね?


「あの〜これから私達とお茶しませんか?」
「美味しいケーキと水だしコーヒーの喫茶店があるんです」


他の女性二人組からは、逆ナンされてる。
するだけあって歳若い魅力ある美女達。

旦那様は若い美人には滅法弱いですからね。

フッと梅さんの言葉が頭の中で過ぎり、どうしようもない不安が押し寄せる。


「ここの女性は随分と積極的だね。いいよお茶ぐらいなら」


え、誘いに乗るの?
しかも愛想よい笑顔の即答で・・・鼻の下を伸ばして嬉しそう。

予想もしていない展開に、私は惨めになり泣きそうになった。


「本当ですか?だったらすぐに行きましょ」
「ちょっと妻を待ってくれない?今そふとくりーむを買って来てるから」
「妻・・・結婚されてるんですか?」
「ああ。これで分からなかった?」
「・・・・。すみませんさようなら」


しかし帯刀さんは一人で行くわけじゃなかったらしく私を待つよう女性達に言って、驚きを隠せない女性達に結婚指輪を見せつける。
帯刀さんが既婚者だと分かった瞬間、大半の女性達がその場から何事もなかったように去って行く。

わかりやすい。
しかし私はだまされない。


「はい。ソフトクリーム」


気分が晴れずイライラしてる私は、それだけ言ってソフトクリームを渡し先を歩く。

帯刀さんの馬鹿。
なんですぐ断ってくれなかったの?
いくら計算していたとしても、即答バッサリ切り捨てて欲しかった。


「・・・嫉妬ね。これで少しは私の気持ちを理解した?」
「え?」
「私も夕凪が龍馬と私を差し置いて仲良く話している時、私はこう言う嫌な気持ちなんだよ?夕凪はお馬鹿さんだから、ここまでやらないと分からないでしょ?」
「フン、知りません。鼻の下伸ばしてデレデレしていた癖に」


あまりにもふざけた真相とナメてる態度に、私はますます腹が立ち機嫌を損ね嫌みを言い捨てる。
私と龍馬は親友だから、そう言う感情は一切ないって断言できる。

お馬鹿さんで悪かったですね?
知能犯よりよっぽどましですよ。

それに凡人以下の人が完全無欠のパートナーを持った苦労なんて分からない。
いくら愛されていてもそのうち心変わりするんじゃないかって、私の肩にいつも重くのしかかってる。
そんなことになったら、引き止められる自信なんかない。
泣き寝入りするしかないんだ。


「夕凪は、私を怒らせたいの?」
「私は事実を言っただけです」
「事実?なら夕凪は私が浮気すると思ったんだね。確かにあの女性達は、私好みだったことは認める」
「・・・・・・」


なぜか逆ギレ寸前警告してきたにも関わらず私は即答即答で反論すれば、幻滅され聞きたくなかったことを暴露される。

やっぱりそうなんだ。
帯刀さんは美人でスタイルがいい人が好みなんだ。


「でも外見の好みだけでは、恋愛感情は産まれないでしょ?」
「もういいです。私帰ります」
「駄目、帰さない。謝るから機嫌を直して。すまなかった」


私にも思い当たる節を問われても素直になれず駅に戻ろうとすれば、背後から強引に抱きしめられ行く手を阻止して辛そうに謝罪する。


「私には夕凪が必要なんだ。世界中で一番愛してる」
「・・・本当ですか?」
「本当。夕凪が傍にいるだけで、私は幸せなんだよ」


よほど切羽詰まっているのか恥ずかしい台詞を堂々と囁かれ、私のイライラは徐々になくなりおかしくてしょうがない。

こんな帯刀さん滅多に見れないかも?
しかも私をそこまで愛してくれてるんだね。
また帯刀さんの愛情を感じられて嬉しい。


「なら・・・許してあげます」
「ありがとう夕凪」


だから私は機嫌を直して笑顔を浮かばせると、帯刀さんの表情も笑顔に変わった。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ