夢幻なる絆

□番外編2
4ページ/7ページ



凪、帯刀さんと出掛ける。




「帯刀さん、ただ今戻りました」
「お帰り、凪くん。今から私と出掛けるよ」
「え、今からですか?」
「いや?」


夕方になり屋敷に戻ってきた私はいつも通り帯刀さんの部屋に行き帰ったことを知らせると、なんの脈略もなくそう言われ帯刀さんは席を立ち私の元に近づき驚く私に笑顔で問う。
案の定断われば恐ろしいことになると言う、ダークオーラを漂わせている。

一体帯刀さんはどう言う目で、私を見ているんだろうか?
そんなことしなくても私帯刀さんの誘いなら断らないのにな。


「いいですよ。どこに連れて行ってくれるんですか?」
「納涼床だよ」
「私そこ一度行ってみたかったんですよね。ならすぐ着替えてきますね」
「え、着替えるの?」


憧れの納涼床に行けるんであってこないだの着物に着替えようと部屋に戻ろうとすると、帯刀さんはなぜか驚き私を見つめる。

なぜ?


「はい。せっかくなんでこの前の着物・・・は」
「今度は何?」
「私あの着物一人じゃ着れないんだ」
「・・・まったく。女中達を行かせるから、部屋で待っていなさい」
「御意!!」


話している途中基本的で重要なことを思いだしガックリしていると、神様のように帯刀さんが救いの手を差し延べ私は元気を取り戻す。





「あれ、まだ誰も来てませんね?」
「誰も呼んでないから当然でしょ?」
「ってことは二人だけ?」
「そうだよ。私と二人だったら不満でも?」


誰もいない納涼床に通され不思議がる私に対し、帯刀さんはさも当たり前のように言って席に座る。
そして気に障ったのか、冷たく怒っている口調で問う。

私はただ龍馬と西郷さんも呼んでいるのかと思ったから、それで不思議に思っていただけ。
不満なんて何もない。
むしろ不満がありそうなのは、帯刀さんの方だと思う。
私といても、癒しにはならない。


「帯刀さんこそ、私と二人だけでいいんですか?」
「構わないよ。たまには良いと思ってね」
「要は単なる気まぐれですね。それならそれでいいです。私は楽しいですからね」


と素直に帯刀さんの言葉を受け止めた私は、そう言って夜空を見上げる。
もう少しで満月だと言わんばかりの綺麗な月に、BGMは秋の訪れ感じさせる虫達の合唱と川のせせらぎ。
すべてにおいて風流で、気持ちが安らぐ。
それに帯刀さんは格好いいし色っぽいから、目の保養にもなる。
私にとっては大万歳。


「それ本心から言ってる?」
「もちろんです」
「本当に君は手の掛かる人だね」
「うっ・・・、いきなりそれですか?これでも一応は、迷惑掛けないように努力はしてるんです。一応は・・・」
「ねぇ凪くん。君の脳内は本当にどうなってるの?それとも凪くんには好きな人がいるとか?」
「そんな人いませんよ。ってか至近距離です帯刀さん」


私のことを呆れたかと思えば、今度はいきなりわずか数aまで帯刀さんの顔が迫って来る。
しかもなんでそうなるのか分からない以上に、帯刀さんの瞳の奥が微かに悲しそうな気がして驚く。

その意味を示すものは私の脳内を哀れんで、それとも私に好きな・・・・それだけはないか。
きっとまたいつものように、私を構われてるだけ。


「そう?普通だと思うけど?」
「いや明らかに近いでしょう?冗談もこのぐらいにしといた方がいいですよ」
「冗談・・・ね。本気でそう思ってるの?」
「え?あ、はい。だってそれしか考えられません」
「・・・まったく君は人の気も知らないで、よくもまぁそこまでとんちが効かせる。今日の所は私の負けを認めるよ」


変に高鳴る鼓動押し堪え真っ赤になりながらも拒否続けると、ようやく納得した顔になりでもよく分からないことを言って私から離れる。

・・・やっぱり私は遊ばれていたらしい。
だけど今日は私の負けって、一体なんのことだろう?



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ