夢幻なる絆
□4.新婚旅行
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「シロちゃん、猫ちゃん、せっかく待っててくれたのに、さっきはごめんね」
「ニャン」
「気にするでない。凪が幸せであれば、我はそれでいい。・・・だが」
「だが?」
「もし我が人の子の姿であれば、小松帯刀からそなたを奪えることが可能だっただろうか?」
旅行の準備が終わり少しだけ時間が出来たのでシロちゃん達と戯れさっきのことを謝れば、猫ちゃんは多分許してくれシロちゃんも気にしてないと言うけど真剣な瞳で私を見上げる。
そして冗談とは思えない告白を、なんの脈略もなくされてしまう。
今になって私のモテ期到来か?
しかも神様に告白されるって、何気にすごくない?
しかし私の心は、不思議と揺れなかった。
シロちゃんが美形だとしてもそれは同じだと思いたい。
「ごめん、それはないな。例えどんなにシロちゃんの人の姿が格好良くても、私は帯刀さんを心から愛してるからね」
「・・・そうか。なら我は誓う。これから先も凪の命が燃え尽きるまで、我は凪の幸せを守り続けよう。我の愛しき人の子よ」
誤解されないようやんわりではなくハッキリと断る私に、シロちゃんはそれでもどこか淋しげにそんな誓いを立ててくれる。
我の愛しき人の子。
これには少しドキッとしてしまう。
このことは帯刀さんには、絶対内緒・・・出来るかな?
「ありがとうシロちゃん。ずっーと一緒にいようね」
「ニャォン」
そこへ猫ちゃんも口を挟み不満そうに鳴きだしたから、私は嬉しくて二人を抱きしめ密かな願望を言う。
それは簡単そうで、私にとっては難しい願望。
「心配するでない。我の力が回復すれば、すぐにでも叶えてやる。ただし一度だけ我と逢瀬をして欲しい」
「本当に?嬉しい。なら今度逢瀬しようね」
私の心を読み取ったシロちゃんは心強いことを言ってくれた後、ちょっとだけおどけながら冗談っぽくそんな条件を付け加える。
それはとてもじゃないけど本気に見えないから、私も親身に考えることなく軽く頷けた。
帯刀さんだってそう言うことなら、快く許してくれるはず。
「夕凪、そろそろ行こうか?」
「うん。あ、そう言えばシロちゃんはお留守番ですか?」
そこへようやく帯刀さんが私を呼びに来てくれ荷物を持ち立ち上がった時、フッと今さら重要なことに気づき聞いてみる。
なんで今までそこまで考えなかったんだろう?
梅さんにお世話を任せて、当然お留守番?
可哀想だけれど、こればっかりはしょうがないか。
「もちろん留守番と言いたいとこだけど・・・特別に連れてってあげても構わないよ」
「帯刀さん、ありがとう」
しかし諦めかけていた私の予想とは正反対な答えが返って来て、私は嬉しさのあまり帯刀さんに抱きつく。
そして私から進んで、頬にキスをする。
帯刀さんは最高の旦那様。
だが・・・。
「なんだそのいかにも勝ち誇ったクソ生意気な笑みは?」
「ただ夕凪の心は、完全に私だけの物だと思ってね」
「ク・・・そなたと我の相性は最悪な物」
「ええ、それには同感です。私もハッキリ言えば、あなたのことが嫌いです」
シロちゃんにとっても嬉しいはずなのに、なぜかそんな薄暗い邪悪なテンポの良い言い争いが始まってしまた。
神様相手なのに、やっぱり今日も帯刀さんが優勢・・・。