夢幻なる絆

□4.新婚旅行
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「帯刀さん、おはようございます」
「おはよう。夕凪」

朝起きると隣には帯刀さんがいて、私達はあいさつを交わし合う。
何気ない当たり前だと思う朝だけれど、こう言う二人の朝はまだ二回目。
こうして目覚めると一番最初に目に映るのが愛する人だと、朝からテーションマックスだね。

「帯刀さん、私との約束覚えてますか?」
「江戸と日光に旅行でしょう?今日から行くよ」
「なら早く支度をしないといけませんね」
「もう少し夕凪をこうして感じさせて。夕凪も朝から私を感じたいでしょう?」
「・・・そうですね。起きるのはまだいいや」

ちゃんと約束を帯刀さんは守ってくれていてしかも時間がないので起きようとしたのに、帯刀さんはそれを許さず私をきつく抱きしめる。
そんなこと言われたら、私だってもう少しこの温もりを感じていたい。

朝からこんな幸せで良いのだろうか?
後でその分不幸・・・それはまた私が未来に戻る時だね。

今回はどのくらいいられるんだろう?
出来るだけ長くいたいな。

「夕凪」
「なんですか?」
「ただ呼んだだけ」
「なら私も帯刀さん」

世間一般的で言う完全なラブラブ馬鹿夫婦がするような会話で、朝っぱらから二人だけの世界を満喫。
こんなこと今までだったら私には無縁で絶対にないと思っていたのに、実際にそうなるとこう言うのもありかも知れない。

ガリガリガリ


「早く我らにも、凪と逢わせよ」
「ニャ〜ン」

突然障子を爪で磨ぐ音が聞こえたと思ったら、シロちゃんと猫ちゃんが声を揃え私を要求する。
二人は相変わらず仲が良さそうで何よりである。

「昨夜は約束通り凪を譲ったのだから、小松帯刀も我らとの約束を守れ」
「ニャンニャン」
「無理。これは夕凪の望みでもあるのだから、もう少し大人しく待っていなさい」
「そうなのか?凪?」
「う、うん。でももう起きるからね」

一体三人の中でどんな取り引きがあったのかは分からないけれど、シロちゃんは本当に寂しそうで切なげにそう問う。
私も途端にシロちゃんと猫ちゃんにもに会いたくなる。

あのふかふかモコモコの毛並みに、あの最高な抱き心地。
それに猫ちゃんの肉球だって、ぷよぷよ気持ち良いだから。

でも・・・

「駄目。そんなの、許さないよ。夕凪は私だけの物なのだからね。それとも夕凪は私より、あのシロと猫を取る?」
「帯刀さん・・・。・・・シロちゃん、猫ちゃん。本当にごめん・・・」

また帯刀さんに引き留められ、卑怯すぎる問いを投げ私を束縛する。
私もそれが嬉しくて、帯刀さんからなかなか抜け出せない。

帯刀さんの懐は、優しさで満ち溢れている。



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