夢幻なる絆

□4.新婚旅行
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「帯刀さん、このお団子も美味しいですよ」
「・・・夕凪。食べてばっかりいると、夕飯が食べられなくなるよ。今夜は湯葉の会席料理なだけれど」
「あ、ならこれで最後にしますね」
「・・・・・・」

夕食のメニューを聞いた私はそう言って二本あった串団子をいっぺんに食べ終え、帯刀さんを呆れさせ黙らせてしまった。
でもそれは本当に呆れて幻滅された訳じゃないから、私は帯刀さんの顔を見上げニッと笑う。

・・・本当に私って今すごい幸せなんだな。
帯刀さんとこうして一緒にいる時間が長くなればなる程、私どんどん帯刀さんのことが愛しくなってこの想いはもう止まらなくなっている。
京を出発した時の何十倍も愛しくなっていて、明日が来るのが怖くて怖くて堪らない。

明日目覚めたら、帯刀さんはもうどこにもいない。
温もりも姿も見られなければ、声も聞けないんだよね?
私は一体何日絶えられるのだろう?
・・・またすぐに帰って来れたらいいな。

「夕凪、大丈夫。離れていても私はずっ−と夕凪を想ってるから・・・」
「え?」
「だから今度も泣いたりしたら駄目だよ」
「・・・はい」

やっぱり不安は顔にも出てしまってたようで道端にも関わらず、優しく抱きしめられ優しい言葉を投げ掛けられる。
強がって否定してみようとした物の、あまりの心地よさにただ頷くことしか出来なかった。
私もずっーと帯刀さんを想ってる。

「夕凪、顔を上げて」
「はい」
「誓いの口づけ。・・・今日の夕凪は、あんこの味がする」

言われた通り顔を上げれば思った通り唇にキスをくれるけれど、終わった後すぐに率直な感想を耳元で囁かれる。
直前まで食べていた串団子は、あんこだったから無理もない。

「今度からそう言う時は拭いてからにしますね。そう言うのは恥ずかしいですから」

キスを貰った私は、すぐに元気いっぱいの元の私に戻った。

帯刀さんのキスは、いつだって私に元気をくれる。
特別なキス。

「そうだね。ならもう一度してあげるから、ちゃんと拭きなさい」
「はい。え〜とハンカチハンカチ」

よほどあんこの味が気に食わなかったらしくやり直しを催促され、私は巾着袋からハンカチを探しだし急いで唇を重点的に拭きリップを付ける。
すると視線の先に見たことある人物が二人見え、こちらにやって来るのが分かった。

「え、宰相に夢の屋さん?」

思い浮かんだ名前を口にする。
二人とも出会いがあれだったこともあり、私が苦手としてる人達だった。

「ほぅ、こんな所で出会うとは奇遇だね。夕凪、礼儀よく挨拶するんだよ。完璧に出来たら、ご褒美あげるから」
「変なプレッシャー掛けないで下さい」

多分余計な一言だったようで突如そう言う話になり、私を子供扱いして難しい条件を出し悪魔の笑みを浮かべ髪をなでられた。
私がとことんプレッシャーに弱いことを知っているのに、わざとこんな風に難題を出して楽しんでいる。



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