夢幻なる絆

□4.新婚旅行
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「ついに来ちゃいましたね。なんか嬉しいな」
「そうだね。夕凪は日光に来たことある?」
「はい。小学校の修学旅行でも行きましたし、去年も行ってきましたよ」

お昼過ぎようやく最終目的地に辿り着き、私は無駄にはしゃぎ喜ぶ。
神社や寺とか見ると無駄にテーションが上がり周りが見えなくなり、私は早く先に行こうと帯刀さんと繋いでる手を放すがすぐに今度は腕を掴まれる。

「そんなに急がないくても、日光は逃げない」
「あ、すみません。そうですよね、ゆっくり行きましょう。まずは神の橋・・・え、何このどんよりとしたイヤな感じ?」
「凪にも分かるのか?この邪気が・・・」

私を抑える帯刀さんの声に我に戻り足を止めちょっとおどけて言いかけた途中、何となく嫌な感じが流れ出しシロちゃんも感じてるらしく辺りを警戒する。

邪気?
そう言えばこの感じどこか・・・あ、シロちゃんに掛けられていた呪詛に似てる。
レベルはまったく異なるけれど。

「夕凪、シロ。私にも分かるように説明して」
「呪詛です。誰かが呪詛に掛けられています。それも巨大な呪詛」
「おそらくこの呪詛は、我ら四神に呪詛を掛けた奴のだろう。奴もいる」
「え、そうなの?じゃぁ早く助けに行こう」
「無視しなさい」
「え?」

帯刀さんだけこの状況が分からないようで、私達で説明すればことは思っていた以上に重大だった。
だから再び私は急ぎ突っ走ろうとすると、帯刀さんは冷たく私を引き止める。

「相手は神を呪詛する強力な輩。今私達が策略もなく突っ込んでも、呆気なく殺されるだけ。死にたくないでしょ?」
「うっ・・・、死にたくないです」

正論過ぎる冷静な判断に、血の気が引き寒気が走る。
確かに戦えるすべがなく中途半端な能力しかない私が行ったとしても、ボスに遭遇したら何も出来ず瞬殺されるだけ。
本気でボスを倒したいのなら作戦を良く練って、戦力がある仲間を集め一気に攻めるしか勝機はない。

・・・それでも五分五分だろうけれど。

「我もだ。せっかく凪に助けてもらった命を無駄にしたくはない」

シロちゃんも自分の能力は十分分かっているのか、私同様すぐに考えを改め後ろ向きになる。

「分かれればいい。この件も京に戻ってからいろいろ調べておくから、今日のところは無視しなさい。シロは念のため札に戻っていなさい」
「フム、仕方があるまい。気もひそめていよう」
「私も分かりました。でもあれもこれも引き受けてくれて、大丈夫なんですか?くれぐれも体に気をつけて下さいよ」

いつもならまず嫌がるシロちゃんが、今回ばかりは素直に聞き入れ札に戻る。
無力でしかない私も帯刀さんにすべてを任しては見たけれども、今までの問題ごともすべて任してるため体が心配になってしまう。
いくら丈夫だとは言え、帯刀さんは普通の人間だ。

「愛する妻に関わることだから、少しぐらいなら無理ぐらいはする。それに忙しい方が、気は紛れるからね」
「たてわきさん?」
「夕凪に逢えない時は、私だってさすがに辛い・・・」
「・・・そうですね。今日はいっぱい楽しみましょう」

滅多に聞けない帯刀さんの寂しげな本音を聞けて、私は心打たれ感動しながらも明るく笑顔でそう言ってみせた。
それは何となく分かっていたけれど言葉で聞くと安心出来て、今もまだ私達の気持ちは一つなんだって自信が持てる。



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