夢幻なる絆

□4.新婚旅行
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日光を目指して数日が過ぎた。
未来では東京から日光は日帰りが当たり前なのに、幕末では日光に行くさえも大旅行。
だけど帯刀さんの馬に乗っての移動は私にとってすごい幸せな時間で、出来ることならずーと日光に着かなければいいとさえ思ったりもした。

だけど

「凪は明日の深夜、未来へ戻ることになる」
「え・・・。もう終わりなんだ・・・。まだ戻りたくないよ」


明日はいよいよ日光と言う前日待ちに待った温泉のある宿屋で、私はシロちゃんから恐れていた現実ついに知らせれ愕然とする。
時期的にそろそろじゃないかなと思って覚悟をしていたのに、やっぱりいざ直接聞くと覚悟は出来ていなかった。
帯刀さんと別れるのは辛い。

「夕凪、わがままは言わない。今度はどこ行きたい?また旅行に連れて行ってあげるから」
「帯刀さんの傍にこうしていられるのなら、私はどこでも良いです」

そんな私を力いっぱい抱きしめてくれてまたあの時と同じことを聞かれるけれど、私はそう答え目をつぶり帯刀さんの心臓の音を聞く。

いつもと同じ優しい音色・・・今はちょっと乱れてるかな?
シロちゃんが突然あんな事言うから、いくら帯刀さんでも内心は動揺するよね?

「そう?だったら今度は私のふるさとに連れて行くよ」
「本当ですか?嬉しい。ならそこで帯刀さんの幼少時代の思い出をいっぱい教えて下さいね」
「そうだね。夕凪になら教えてあげてもいいよ。その変わり夕凪の幼少時代のことも話すんだよ」
「は〜い、分かりました。・・・あでも・・・」
「夕凪?」

単純すぎる私はまたもや帯刀さんの提案にすぐ暗い気持ちが一気に明るくなり調子良く返事をするけれども、すぐにそれの旅行は不可能に近いことに気づき再び気持ちが沈む。
なぜなら私は歴女であって、すぐにおこるであろう未来の事を知っているから。

「ねぇシロちゃん、今度は私いつこっちに来られるか分かる?」
「おそらく夏ぐらいだろう。その頃にはきっと我の力もかなり回復してるであろうから、夕凪を長くこちらにとどめられ・・・イヤ何がなんでもとどめて見せると誓おう」
「やっぱり夏か・・・」

それでも諦めたくなくってシロちゃんに時期を問うと、それはまさしくドンピシャな答えだった。
それでもシロちゃんは私のためにいろいろ尽くしてくれてる。

元治元年 七月 禁門の変。
長州藩が御所内で薩摩藩と会津藩と戦って破れる。
その後すぐ第一次長州征討になって、薩摩藩は長州に向かう。

その時の薩摩藩の指導者は西郷さんだったけれど、そんな大変な時期に家老が薩摩に戻れるはずがない。
きっと帯刀さんだってすべてにおいて忙しいと思うから、私の相手をしている暇なんてない。
そんな時私がううんそんな時だからこそ、私は帯刀さんの傍で支えないといけないんだ。

「・・・何か事件が起きるだね?」
「はい、あります。でも命に関わる事件ではないから平気です。・・・旅行はお預けですけれどね」

本当は十分に大事件で死者もたくさん出ることは確かなんだけれど、帯刀さんは自分に関わる身近な未来は知りたくないから軽く答え残念そうに笑ってみせる。

旅行に行けないのは正直本当に残念だけれど、それは落ち着いた時にでもゆっくりすればいいよね?
だんだんこっちにいられる時間が長くなるんだから、いつまでも今の私じゃなくってしっかりした家老の妻になるべき。
私は今よりもっともっと帯刀さんの心の支えになりたい。



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