夢幻なる絆

□4.新婚旅行
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「・・・夕凪、もう起きなさい」
「やだ。凪ちゃんまだ眠いから、おねんねしてるの」

気持ちよく眠っていると誰かに私は優しく起こされるけれど、まだ私は眠かったから赤ちゃん言葉でだだをこね手を払いのける。
どうも私は昔から朝寝ぼけると、赤ちゃん言葉になるらしい。
いい年した大人が情けないとお母さんから忠告されることもあるけれども、無自覚だから仕方がない。

「・・・凪ちゃんね。なら凪ちゃんはここのうちの子になるんだね?私はもう日光に出発するから」
「やだ。凪ちゃんもパパと日光行くの!!・・・はっ!?」
「おはよう。夕凪」

そんな意地悪過ぎる台詞に私は赤ちゃん言葉で叫び目を覚ますと、そこにはすでに着替え終わったなんだか怖い笑顔の帯刀さんがいた。
邪悪な空気も感じて、すぐに私はやらかしてしまったことに気づく。
何をやらかしたが分からない・・・寝坊?

「帯刀さん、おはようございます」
「ねぇ夕凪、パパとはどう言う意味なんだい?」
「え、お父さん」
「お父さんね。そう、私は凪ちゃんのお父さんなんだ」

いきなり問われた問いに反射的に答えれば、世にも恐ろしい口調で確認される。
それで私は言ったことを自覚した。

「う・・・。朝っぱらから飛んだご迷惑を掛けました」
「朝っぱらじゃないよ。もう昼過ぎだよ」
「え、うそ?なんで起こしてくれなかったんですか?」
「そりゃぁ昨夜は、私が悪かったからね。・・・迷惑を掛けてしまって、すまなかった」

予想以上の寝過ごしに一気に目が冴え焦った私なのに、帯刀さんはなぜかいきなり申し訳なさそうに頭を下げ謝られる。
突然でまさか謝られるなんて思ってもいなかったから、びっくりし過ぎて開いた口が塞がらなくなってしまった。
そのぐらいの衝撃がある。

だってあの帯刀さんが、私に頭を下げて謝ってきたんだよ?
こんなこと始めてだ。

「・・・いえ、私はたいしたことなんてしていません。二日酔いはないですか?」
「お蔭さまでこの通り元気だよ。・・・それよりも夕凪に、何か失礼なことしなかった?その辺の記憶が全くない・・・」
「な何もないですよ。あったと聞かないで下さい。私気にしていませんから・・・」

てっきりすべて覚えてて謝られたと思いきや一番肝心なことを覚えていなくって聞かれるが、忘れて消し去りたい過去に私は顔を真っ赤にして激しく答えるのを拒否した。

あんなこと今更口にしたくはない。
しかもあの後やっぱり興奮と言うか発情しまくり眠れなくって、やっと明け方近くに睡魔が襲ってきたと思ったらこうして寝坊したなんて・・・

「何かしたらしいね。それで夕凪は傷ついてない?」

こう言う時すぐ顔に出てしまう自分に嫌気がさす。
帯刀さんが悪く自業自得なんだろうけれど、ますます悲しそうな帯刀さんを見たくない。

「大丈夫ですから、そんな顔をしないで下さい。でもこれからお酒はほどほどにして下さいね」
「心得ておく」
「ならこれでもうこの話は、お互い様ってことでおしまい」
「そうだね。ありがとう夕凪」

一番の心配事をちゃんと約束してくれたので、私はニッと笑い帯刀さんに抱き着く。
それさえ約束してくれれば、もう私は何も言うことはない。

すると帯刀さんもようやく笑ってくれて、特に合図することなく私達の唇は一つに重なり合う。



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