夢幻なる絆
□4.新婚旅行
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「だからね・・・わたしの・・・・妻は・・・最高なんだよ。夕凪もくだらない心配なんてしないで・・・・わたしに頼ればいいでしょ?・・・ヒクッ」
「分かりましたから、しっかりして下さい」
ディナー終盤に差し掛かり残りはデザートのみになった頃、上機嫌でワインやらビールやらジンやらウイスキーを飲みまくっていた帯刀さんがついに酔い潰れた。
顔を真っ赤に染まらせ目はうつろげ、口は回ってなく酔っぱらいその物。
おまけに普段なら言わない心底恥ずかしいことを言い続けている。
まぁそれだけの量を飲めば無理もない。
「今夜はもう遅いですし、どうぞ泊まって行って下さい」
「そうだね。ならお言葉に甘えて、泊まって行きます」
本当なら一度は遠慮するべきものでも帰るなど無理なことを分かっているため、私は仕方がなくアーネストのありがたい申し出に即答で頷いて見せる。
それにしても大人な帯刀さんが、酒に溺れるまで飲むなんてちょっと意外。
ちゃんと自己管理は出来る人だと思ってたのにな。
これからは私が止めないとね。
やっと私は妻らしいことが出来る。
「幻滅しましたか?小松さんは時たまこんな風に酒に酔うんですよね。まったく・・・」
「確かに意外だけれど、幻滅はしてないよ。帯刀さんだって人間なんだから、欠点のぐらいあるよ。アーネストだってあるんじゃん?今みたいな腹黒で皮肉屋な一面」
帯刀さんの前では絶対見せない腹黒モードを早速全快で呆れ返るアーネストに、私は冷静に答えながらサラリと嫌みも込めて言い返えす。
私が帯刀さんを幻滅する?
そんなの天地がひっくり返ったとしてもありえない。
私は帯刀さんを尊敬して、慕っている。
「言ってくれますね。けれど私が本音を言えるのは、あなたぐらいなのですよ」
「嫌な特別扱い・・・」
「私の本性を知ってしまったのが、運の突きです。諦めて下さい」
「・・・・・」
知りたくなかった事実を知ってしまいこっちが弱みを握っているのに、なぜか私がアーネストに弱みを握られた感じになり軽く言いくるめられてしまった。
反撃したくても残念ながら何も言葉が出てくるはずもなく、悔しい思いをする哀れな私。
これも頭の差なんだろうか?
「本当にあなたは面白い人ですね?小松さんの元ではなく、私の元に落ちてくれたら良かったのに」
「・・・それどう言う意味?」
「言葉通りの意味です。そしたらあなたを私のペットとして、大切に傍に置いておきたかったですよ」
「アーネストの元に召喚されなくて本当に良かった」
そんな私に今度は愉快そうに仮定の話をするアーネストにフッとイヤな予感がして問うと、案の定イヤな予感が的中してしまい今度は負けずとちゃんと言い返しため息をつく。
どこまで嫌味な人なんだろうか?
だけど本当のことを言えば、帯刀さんもアーネストと一緒だったんだよね。
私のこと猫だって言ってたし、そう言う扱いもされていたみたいだし。
それがいつどんな風に恋愛感情に変わって行ったのか、未だに聞けていない。
・・・今だったら聞き出せるのかな?
「ですね。私はきっと小松さんのように、あなたを愛せる自信はありませんから」
「それは私だって同じ」
と売り言葉に買い言葉感覚で、私は興味なく答えて見せる。
そんなの仮定でも絶対にありえない話だ。