夢幻なる絆

□4.新婚旅行
36ページ/48ページ



「サトウ様、お二人を連れてきました」
「ありがとう。さぁお二人とも席に座って下さい」

メイドさんに連れてこられた部屋にはすでにアーネストがいて、何事もなかったように空いている席に座るように言われ私達はその席に座る。
帯刀さんには私が悩んでいることは内緒にして欲しいと、予めアーネストに言っといて正解だったようだ。

「ではデザートを除く、料理を一気に持ってきて下さい」
「はい、かしこまりました」

そしてアーネストは優しくそう頼むと、メイドさんは頭を下げ部屋を出て行った。

一気にと言ったのは、会話の内容を聞かれたくないと言う配慮だろう。
アーネストもそう言うことには抜け目がないもんね。
それとも別の理由があったりして?

「さっそくですがサトウくん、妻の素性はくれぐれも内密にしてて下さい」
「分かっています。小松婦人ともそう言う約束で、話して貰いますから」
「そうですか。それでサトウくんは妻の話を信じたのですか?」

予想通りと言うべき早速帯刀さんはその話を切り出して、さっきはごたごたになり聞けなかった私も知りたい真相を問う。

・・・結局アーネストは私が未来人って言うことを信じてくれたのかな?

「正直信じがたいことですが、小松婦人が嘘を言っているようには見えませんでした。小松さんの言う通り婦人は嘘を付くのが下手ですね」
「そうなんですよ。それなのに妻は最初の頃はよく下手な嘘をついて、手に焼いていたものです」
「帯刀さん、何もここで暴露しないで下さいよ。恥ずかしい・・・」

半信半疑だけど私の性格を見抜いているアーネストの言葉に、帯刀さんは言わなくても良い暴露話を機嫌良く始める。
言うまでもなく私は顔を真っ赤に染まらせ、阻止しようとするけれど無駄な行い。

そりゃぁみんな事実で良く私は自分の身を守るため嘘を付いて、その度嘘が見抜かれ怒られたりはする。
嘘を付いても付かなくても、どのみち私は怒られる運命なんだよね。

・・・うっっ、あまりにも自分が情けなさ過ぎる。

「小松さんも大変ですね」
「ええですが、今ではなんでも私を頼ってくれて可愛い物です。・・・妻と過ごす時間は何よりも幸福で、結婚したことを後悔したことなどまだ一度もない」

アーネストにも苦笑されますます立場をなくし恥ずかしい思いをする私だったけれど、帯刀さんの思ってもいない優しさが溢れる台詞に私は幸せ過ぎて嬉しくなった。
別の意味で恥ずかしいことは恥ずかしくても、温かい気持ちが満ちあふれていく。

もしかして帯刀さんは、私の悩みを知っている?
だから遠回しで余計な心配をしなくても大丈夫と言ってくれてる?

・・・帯刀さんならありえるね。

「私も早くそう言う人に出逢いたいものです」
「私の場合ある日突然目の前に落ちてきましたよ」
「そうなのですか。それはまさに運命の出逢いでしたね」
「まったくですよ。これだから人生は面白いものです」
「私もそう思います。その時まさか私が帯刀さんと結婚するなんて思いませんでしたから」

そう私達は言い合い笑い合い、その後の会話も盛り上がる。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ