夢幻なる絆

□4.新婚旅行
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「夕凪、遅くなってすまない・・・夕凪?」
「・・・なんでもありません」
「なんでもない?そんなはずないでしょ?」

私に気を遣ったのかアーネストが席を外し再び一人になってこれからのことを考えている中、ようやく帯刀さんが戻ってきて私の異変にすぐ気づき隣の席に座り親身になって心配してくれる。
いつもの私だったらそんな優しさにすぐ助けを求めてしまうけれど、今は甘えてしまいたい弱い心をグッと堪えた。

これからどうすればいいのかまったく分からないけれど、このことだけは帯刀さんに頼らず一人で解決しないと駄目なことぐらいは分かる。
じゃないと私はいつまでも駄目な私のままで、ちっとも成長が出来ない。
これからも一生帯刀さんの傍にいたいから。

「・・・これは私一人で解決しないと、何も変わらないことなんです。だから・・・」
「そう?ならもう聞かないけど、もし限界を感じたら私に言うんだよ。・・・いいね?」

私の決意がちゃんと伝わったらしく、それ以上は問わず私を優しく抱きしめてくれる。
途端に気持ちが楽になり不思議と元気と勇気が沸いてきて、なんだか私にだってやれば出来るような気がしてきた。
この温もりは私にとって、大切なとこで誰にも譲りたくはない。

・・・私って単純で立ち直りが早いかも?
これも帯刀さんが傍で、私を支えてくれるからだろうね。
何も言わなくても帯刀さんは、私をこうやって助けてくれる。

「御意です。でも私一人で解決できそうなんで、大丈夫ですよ。それからアーネストに私が未来人だってこと話しました。信じてくれたかは、分かりませんが」
「サトウくんに?まぁ夕凪がそうしたいのなら別に構わないけれど、あんまりそう言うことは他人に言わない方が良い」

元の私に戻って大切なことを正直に告げると少々驚かれお咎めを受けるが、予想していたよりずっと軽い物でちょっと拍子抜けしてしまう。

もっときつく言われると思っていたのに、帯刀さんってアーネストのこと信用してる?
もしかして夕食の席で話すつもりだったとか?

「そうですね。これからはいろいろ気をつけます。・・・今夜はなんでしょうね?久しぶりの洋食なんで楽しみです」
「夕凪は洋食は好きなの?」
「未来では洋食が主ですからね。和食ももちろん好きですが」

悩み事が軽くなった途端お腹が空き、夕食の話題を持ちかけ自然と私の顔に笑みが宿った。
こっちに来てからの食事は言うまでもなく和食だけで、毎日似たような食事に正直ちょっとだけ飽きていた所。
高級な食材に美味しい和食ではあるけれど、それでもやっぱり洋食が恋しくなる時もある。

そう言えば、イギリス料理ってなんだっけぇ?
確かローストビーフはそうだよね?

トントン


「はい、どうぞ」
「夕食の準備が出来ましたので、ご案内を致します」

そんな時タイミング良くドアをノックする音が聞こえ帯刀さんが許可すると、さっきのメイドさんが姿を見せ礼儀良くそう言うのだった。



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