夢幻なる絆

□4.新婚旅行
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「小松婦人、少しは落ち着きましたか?」
「・・・うん、ごめん。泣くなんて卑怯だよね」

何も言わずにいたアーネストがさっきとはまったく異なる申し訳ないと言った表情を浮かべ口を開き、私も少しだけ落ち着きでもまだ全快にはなれず涙を拭きそう元気なく答える。

泣いて何も言わないなんて、卑怯のすること。
だけどあまりにも痛い所を付かれて、冷静に話す事なんて出来なかった。

「そんなことないです。少し言い過ぎました。あんな事言われたら、誰だってそうなります。・・・すみません」
「・・・私帯刀さんに頼ってばかりいて、迷惑も沢山掛けている。家老の妻ならもっと旦那様を支えてしっかりしないといけないのに、・・・妻として失格なんだ」
「小松婦人、本当に申し訳ありません。私はただ本当のことが知りたいだけであって、けして泣かせるつもりはありませんでした」
「・・・ねぇアーネスト、これから話すことはトップシークレット。・・・約束できる?」

もう一度アーネストは深く私に謝りそれだけ確認し、私は強く頷きそして覚悟を決め問い返す。

今は隠せたとしても、私に対する疑いの目は消えない。
だったらいますべてを話して、この件はここで終わらそう。
帯刀さんに頼らず、私が一人で解決する。

「off course.もちろんですよ」
「実は私未来の日本からタイムスリップしてきたの。未来の日本は西洋文化も取り入れているから、私にして見れば当たり前なんだよね」
「・・・・・・」
「信じられないかもしれないけれど、これが紛れもない真実」

ゆっくり真剣に私なりに分かりやすく説明しても、アーネストは眉間のシワを寄せ何も言わずに私を見つめている。
疑ってはいるけれど、端から信じていない訳ではない。

「・・・小松さんはご存知なのですか?」
「全部知ってるよ。そりゃぁ最初は信じてくれなかったけれど、それでも行く当てのなかった私を屋敷に住まわせてくれてよくしてくれたんだ」

信じる信じないよりもそんなことを聞くから、私はそれにもはっきりちゃんと答える。

帯刀さんは興味心で私を置いてくれたと言ってたけれど、帯刀さんは優しい人だから置いてくれたんだと思う。
私じゃなくても、それは同じ。

「小松婦人は幸せなんですね」
「うん。でもアーネストの言う通り今のままだったら、いつの日か愛想尽かされちゃうよね?」
「そんなことないです。あれは物の弾みで言ってしまっただけ。小松さんはあなたを心から愛していますよ。小松さんを見てれば、良く分かります」

今の今までなら帯刀さんに愛され続けられる絶対の自信があったのに、今は愛され続けてくれる自信はこれっぽちもなくなってしまった。
アーネストの言葉は気休め程度にもならない。

恋は盲目。
覚めたら、きっと終わってしまう。
欠点だらけの私なんかが、帯刀さんを引き止めて置けるはずがない。

「私やっぱり努力しないといけないね。それも相当・・・」
「小松・・凪さん・・」

すっかり私が未来人であることはどうでもいい感じになってしまい、再び泣き出しそうになる私をアーネストは申し訳なさそうに見つめる。



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