夢幻なる絆

□4.新婚旅行
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「お待たせして申し訳ありません」
「いいえ、我々も今来たばかりですから。ねぇ夕凪?」
「はい。グッドタイミングだよ」

待ち合わせ場所に着いて割合すぐにやって来たアーネストに、私達は笑顔でそう答えを反す。
例え待ったとしてもこの答えが、世間体の礼儀と言う物である。

「それは良かった。小松婦人その着物良く似合いますよ」
「ありがとう。帯刀さんに選んで買ってもらったの。帯刀さん、センスが良いからね」

ここに来る前に買ってもらった桜模様の着物を褒めてくれ、私は嬉しくて子供のように一回転して自慢した。

自分では馬子にも衣装だと思ったんだけれど、案外そうでもないのかな?
でもアーネストのことだから、お世辞で言ってる?
だとしたらあまり浮かれ過ぎるのは、良くないかも?

「それはよかったですね。では参りましょうか?馬車を用意させてます」
「そうだね」
「馬車なんだ」

私にとって馬車は特別な場所。
帯刀さんからプロポーズをされ、すぐに結婚した。

・・・あれ?
そう言えば、プロポーズって、
私と今すぐ結婚しなさい。
はいしか認めないから。
だったよね?
今考えたらあれってプロポーズよりも、強制の命令でしかなくない?

「?どうしたの夕凪?」
「帯刀さん、なんで私と付き逢わずに、いきなり結婚したんですか?」
「は?」
「小松婦人、いきなりどうしたのですか?」
「だって愛しているだけで結婚しないですよね?結婚は一生の問題のことですから、普通お付き逢いしてから結婚じゃないんですか?」

思いだったら吉日で今更ながら真相を探ると、アーネストまで目を丸くして唖然と問う。
だから私はわけを答え、帯刀さんを見つめ続ける。

「私は夕凪のことを誰よりも理解しているから、もう付き逢う必要はないでしょ?夕凪は私だけの物で、誰にもあげる気はなかったからね。それでも不満なの?」
「いや不満はないです。私を貰ってくれて、ありがとうございました」

あまりにもしつこいからか帯刀さんの表情が険しくなり怪訝しく答えられ、危機感を感じた私はそれ以上聞くことが出来なくなり話を終わらせ反射的に感謝した。
理由はどうあれ私を貰ってくれたのは、感謝に値する。
もし両親が私の結婚したことを知ったら、二人して泣いて喜び帯刀さんを崇めるだろう。

「本当に小松婦人は見ていて飽きない愉快な人ですね。小松さんが羨ましい限りです」
「ええ。サトウくんの言う通り、妻といると退屈することはないですよ。いきあたりばったりで、そそっかしいのは難点ですが」

そんな私達を見ていたアーネストが本気で羨ましがれば、気分をよくした帯刀さんは誇らしげにあまり言って欲しくないことまで答える。

事実なだけに、悲し過ぎる。

「見ていて分かります。もしよろしければディナーの時に、二人のなれそめ話を聞かせてくれないでしょうか?」
「そうですね。いいよね夕凪?」
「帯刀さんが良ければ、私は構いません」

ちょっと知られるのは恥ずかしかったけれど、帯刀さんがどんな風に話すのか興味心の方が強かった。



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