夢幻なる絆

□4.新婚旅行
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「良い景色に美味しいお弁当。おまけに隣には最愛の旦那様。文句のつけようがないですよね?う〜んこの揚げ豆腐ショウガとの相性が最高」

南方先生お勧めスポットである江戸の街並みを見渡せる丘で、咲ちゃんお手製のお弁当を食べながら私はニコニコ笑顔で大絶賛。
ほっぺたが落ちるほど美味しい。

「まったくだよ。でも私は夕凪の手料理か食べたいね。まさか作れないとか言わないよね?」
「あまり私を馬鹿にしないで下さい。りょ料理ぐらい私にだって作れますよ。・・・そりゃぁ咲ちゃんのように凝った物は作れないし、たまに失敗して何度か火事になりそうになりましたけど・・・」
「それ作れるとは言い難いと思うよ」
「うぐ・・・。確かにそうかも・・・」

つい小声で言う必要もない余計なことを言ってしまうと、迷いないきつい現実を叩き付けられいつも通り口ごもる。

間違えなくそれは料理が作れないと言う部類で、作れるって言うにはあまりにも図々しいのかも知れない。
私が作れる料理と言えば、卵焼きとカレー系と言ったルーと材料を入れたらはい出来上がりと言った物。あとはハンバーグ。
味噌汁なんて毎回味違っているし、魚を焼けば三回に一度は焦がす。

・・・・・・・。
私一人暮らししているのに何をやってたんだろう?
いくら結婚しない気でいたからって、少しぐらいはお母さんから料理を教えてもらっとけば良かった。

「だけどそれでも良いから、夕凪の得意料理をご馳走して」
「だったら・・・そのうちカレーをご馳走します。多分アーネストに言えばカレー粉を調達できるはずだから・・・・」

考えれば考えるほど自信喪失中の私にすべてを知った承知の上そうせがんでくる帯刀さんに、一番無難と言うべき作れそうなこの時代には馴染みのない料理を言って約束を交わす。

アーネストには貸しを作りたくなかったけれど、他に私が作れる手料理なんて何もない。
それに確かこの時代インドは、イギリスの植民地だったはず。
だからアーネストの力が必要なんだ。

「楽しみにしてるよ。妻の愛情が込められた手料理は多少下手であっても、何よりも美味しいらしいからね」
「・・・うぅぅ・・・」

味に期待されていないと思ったら変なプレッシャーをワザと掛けられ、私は涙ながらお弁当を食べ続けることにした。
でもあんなに美味しかった咲ちゃんのお弁当なのに、今はもうなんの味も感じる余裕がない。

−凪、我もそのカレーとやらを楽しみにしておる。

追い打ちを掛けるようにシロちゃんの声が脳裏に過ぎり、私はもうカレーを作る約束をしたことに後悔するのだった。
失敗は許されないことを自覚する。

・・・アーネストにカレー粉を頼むより、未来からカレールウを持って来た方がいいのかも?



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