夢幻なる絆

□4.新婚旅行
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「それでは凪さん、飲み薬と塗り薬を忘れないようにして下さいね」
「はい。いろいろと、お世話になりました」

検診の結果取り敢えず異常がないと言うことで退院(?)になり、わざわざ門まで見送りに来てもらい私は最後にもう一度そう言い深く頭を下げる。
南方先生のおかげで私の命は助かったし、脚気の予防を知ることも出来たしいいことずくめだった。
それに龍馬を助けることには、南方先生も前向きみたい。

「私がちゃんと責任を持って薬の管理します。お代は後ほど藩の者に持ってこさせますので。それから例の件、考えといて下さい」
「分かりました」
「なんのことですか?」
「政務のことだから、夕凪には関係ないよ」
「そうですね。なら南方先生、お手紙書きますね。それに言われていた物も、いつになるか分からないけど送ります」
「助かります。私も手紙を書きますね」

政務のことと言われたらそれ以上追求する以前に興味はなく、私は私の話をして約束を交わす。
それは帯刀さんにしてみれば面白くないことかも知れないけれど、言わないで南方先生と交流するのはもっとイヤだからわざとここで言う。
脚気について詳しく教えてくれたお礼に、未来から懐中電灯や乾電池や医学書や薬を持って来て送る。
南方先生は最初遠慮してたけれど、これは私なりのお礼だから遠慮はいらないと言ったんだ。

「夕凪も南方先生と何か約束してるんだね?やましいこと?」
「そんなことないじゃないですか?いいましょうか?」
「いいよ。私は夕凪を信じてるから」
「へぇぇ」

やっぱり帯刀さんに問われたけれども、真相までは聞かれなかった。
信じてもらえるのがやたらに嬉しくそして気恥ずかしくって、どう反応すれば良いのか分からず照れ笑いしてとっさ的に帯刀さんと腕を組む。
私も帯刀さんのこと、何があったとしても信じてる。

「それじゃぁ、そろそろ行こうか?」
「はい」
「凪様、お待ち下さい」
「え?」

これで本当のお別れで私達は歩き出そうとした時咲ちゃんの声が私を呼び、私は足を止め声のする玄関先に目をやると咲ちゃんが私達の元にやってくる。
可愛い風呂敷で包まれている何か大きめな物を持って。

一体、なんだろう?

「凪様、私二人のためにお弁当を作りました。どこかでお召し上がって下さいませ」
「お弁当?わざわざ作ってくれたの?ありがとう」

そう言われて渡された風呂敷の包みは確かにまだ暖かく、美味しそうな匂いも漂って来てよだれが無意識に出てくる。
早く食べたいって思う欲望が、私の体を支配しそうだ。

「いいえ、とんでもありません。あの凪様?」
「何、咲ちゃん?」
「こんなことを言うのも失礼だとは思いますが、・・・私達友達ですよね?」
「うん、もちろんだよ」

あまりにも深刻な顔をするので何事かと思っていたら、内容はごく当たり前のことで私はすぐにそう頷き返す。
すると咲ちゃんは、笑みを浮かべる。
可愛いお人形さんみたいな笑顔。

咲ちゃんは私にとって、過去幕末で出来た初めての同性の友達。



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