夢幻なる絆

□4.新婚旅行
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「う〜ん、よく寝た」

気持ちよく目覚めるとかすかに外が明るくなっていた。
帯刀さんはまだ熟睡中で起こすのも悪いと思い、私はそっと部屋を抜け出し庭に出る。
朝の風はまだ寒かったけれど、清々しくて深呼吸すると気持ち良い。

「おはよう、凪」
「あ、おはよう。シロちゃん。シロちゃんも起きてたんだね」
「我は人の子と違って、あまり眠らない。小松帯刀はまだ寝てるようだったから、約束通り我が凪を守る」

そこへシロちゃんが私の元にやってきて、頼りになることを言いながら傍に寄り添う。
私はしゃがみ込み、シロちゃんをギュッと抱きしめる。

見た目は頼りないけれども、シロちゃんは神様だから頼りになる。
帯刀さんだってそう思ったから、私の護衛を頼んだに違いない。
なんだかんだと言っても、二人は名コンビだしね。

「力はある程度回復したんだね?ありがとうシロちゃん」
「たかが怨霊ごとき、我の相手ではなくなった。それに心の会話も可能となり、気を制御出来るようになった。これからは気兼ねなく、凪と外出できる」
「さすがシロちゃん。だったらこれからは・・・」
「凪さん、おはようございます」
「え、あ、南方先生。おはようございます」

庭には私達だけだと思ってすっかり油断していたため、南方先生の声が必要以上に驚き心臓が止まるかと思った。
会話してるのを聞かれていないこと祈りつつ南方先生の方に振り向けば、ちょっと驚き不審そうに私達を見つめている。

絶対に聞かれた。

「凪さんは誰と話していたんですか?」
「独り言です」
「独り言?男性の声も聞こえてましたけど」
「そそれは腹話術の練習で、聞かれていたなんて恥ずかしい」

天の助けか白虎のおかげなのか決定的な瞬間を見られてはいなかったようで、私はとっさに思いついた言い訳でどうにかやり過ごせるように試みる。

でも本当は腹話術も声色も今までしたことないから、突っ込みを入れられた時点でアウトだけれど・・・。

「腹話術ですか。確か凪さんは司書でしたね。最近の図書館は大変なんですね」
「え、はい。そうなんですよ。アハハハ」

思いの他勝手に納得してくれこれ幸と思い、精一杯話を合わしなんとか乗り切ることに成功した。

しかし油断は禁物。
話題を変えなければ、私のことだから墓穴を掘る。

「そう言えば南方先生、安道那津は本当に脚気にいいんですか?」
「はい、予防にもなりますよ」
「なら私に作り方を教えて下さい。帯刀さんは数年後脚気で亡くなる予定だから、今から対策をしてれば助かると思うんです」

現実の帯刀さんとは無縁そうで忘れかけていた死因を打ち明け、頭を下げ真面目にお願いをする。
これはもちろん帯刀さんには、まだ話せずにいた。
まさか自分が数年後死ぬと言ったって信じてくれないだろうし、私だって死なせるつもりはない。
未来には脚気を治せる方法があるから、そろそろ真剣に調べようと思ってた。

「凪さんは本気で未来を変えようとしているんですね」
「はい。龍馬も助けるつもりです。私には何も力はないけれど、いつどこで殺されるかは知っています。だから帯刀さん達にお願いして、何がなんでも助けます」

羨ましそう言いながら私を見つめる南方先生に、私は力ある言葉で胸にしまっている決意を口にした。

龍馬を殺したのは未だに良くわからなくって、一説には薩摩藩の誰かじゃないかと言うのもあるけれど、それだけはないって私は信じている。
だって龍馬は小松帯刀の正妻である私の親友なのだから、絶対に帯刀さんが許可するはずがない。
だから私はその時が来たら、帯刀さんとシロちゃんにすべてを話して協力してもらう。



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