夢幻なる絆

□4.新婚旅行
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助手さんの名前は橘咲と言って旗本の娘なんだけれど、結納を放棄してしまい母親から勘当され現在仁友堂に身を寄せているそうだ。
南方先生のような優秀な女医さんを目指しているらしい。
そして南方先生が未来人と知ってる人でもあり、私のことも事情を知っている。

「ねぇ、咲ちゃん。咲ちゃんって南方先生の恋人なの?」

ガチャ〜ン


「そんなことは断じてありません」

ただの好奇心で聞いた素朴の問いに、咲ちゃんは思いっきり動揺して全否定する。
それは明らかな答えでもあった。

「咲ちゃんって可愛い。私咲ちゃんのこと応援するね」
「辞めて下さい。南方先生の想い人は未来にいるのですから」
「え、あそうなんだ。余計なこと言ってごめんなさい」

私のお馬鹿な言葉に悲しそうに真実を語る咲ちゃんに、それでも応援すると言えず謝るしかなかった。
もし私が南方先生の彼女の立場だったら、それはあまりにも残酷だから。
ある日突然他に好きな人が出来たなんて言われたら、私はどうなっちゃうんだろう?
帯刀さんに側室が出来ていたら・・・。

「凪様?」
「あ、たびたびごめんね・・・帯刀さんは格好良いし頭も良いから、今の状態が続いたらやっぱり側室を作るんだろうなって思ったらつい悲しくなっちゃって」
「凪様・・・」

考えただけで胸がきしんで涙が止まらなくなり、咲ちゃんに余計な気を使わせてしまう。
話はいつの間にか私の話になってしまった。
私が咲ちゃんを励まさないと駄目なのにね。

「凪様は未来とここを行き交うことが出来るんでしたよね?」
「うん、まったくやな体質・・・」

しかも言わなきゃいいのに、愚痴までこぼしてしまった。
帯刀さんと一緒にいる時間が長くなればなるほど、私は帯刀さんの傍にもっともっといたいと言う気持ちが大きくなるばかり。


「それはきっと何か理由があるのだと思います」
「理由・・・か」
「はい。そう言えば龍神に選ばれ召喚された異なる世界の神子様が、この世界をお救いになられると言う古い言い伝えがあると聞いたことがあります」
「龍神から選ばれし神子・・・。なんかどこかのゲームネタっぽい話だけど、調べる価値はありそうだね」

咲ちゃんの言葉に一時考えないことにしていたことをフッと思い出していると、聞いたことがない貴重な情報を教えてもらいようやく明るい兆しが見え始める。
まるで厚い雲が一気に晴れて、太陽が差し込んでくるような。

ちょっと何かが引っかかるけれど、この際少しでも可能性があるのならなんでも良い。
藁にも縋るとは、きっとこう言う時に使うんだろうね。

「げーむ?それは一体どのような物なのでしょうか?」
「未来の遊びかな。分かりやすく言えば、物語がある双六みたいな物かな?」
「そなのですか?面白そうな物なのですね」
「うん。すごい面白いんだよ」

ゲームに興味を示した咲ちゃんに、私のテーションは徐々に上がりおもしろさを伝える。

それからゲームの話で、私達はしばらく盛り上がった。



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