夢幻なる絆

□4.新婚旅行
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「・・・帯刀さん・・・」
「夕凪は正真正銘の馬鹿なの?もう少しで死ぬところだったんだよ」
「・・・ごめんなさい。でも女の子を見殺しになんて出来なかったし、帯刀さんなら絶対助けてくれると信じてたから」

気がつくと病院独特の匂いがしていて目を開けると、眉間のシワを寄せ怒りをあらわにしてる帯刀さんの顔が飛び込んで来る。
優しい言葉を掛けられると思いきや家中をこだまするほどの激怒されてしまい、反射的に飛び起き謝り言い訳もしてしまう。
肩を辺りがズキズキとしてくるけれど、さっきほどの痛みはなくなっている。

あそこで見て見ぬ出来るほど、薄情な人間にまで私は落ちぶれたくはいない。

「・・・怒ったりして、すまない。無事で本当に良かった」
「そんなことないです。それだけ帯刀さんは、私のこと心配してくれてたんですよね?」
「当たり前でしょ?心臓が止まるかと思った」

すぐに怒った表情から悲しそうな表情に変わり、私をそっと抱きしめてくれ嬉しいことを当然のように言ってくれた。
ギュッと抱きしめられなかったのは、点滴を気にして傷も労ってくれてるから。

私本当にこの人に愛されてるんだな。
それなのに私は龍馬にときめいたりして、馬鹿見たい。

「帯刀さん、ごめんなさい。私ちゃんと帯刀さんのこと愛せていませんよね。だけど私帯刀さんのこと愛してるんです」
「知ってる。そんな心配しなくても、ちゃんと分かってる」

そんな自分がすごく情けなくってまずは言葉でこの想いを伝えると、帯刀さんは抱きしめたまま優しく頭をなぜてくれる。

「・・・口づけして下さい」
「いいよ。目をつぶって」

甘えるようにせがむと帯刀さんはクスッと笑いそう言って、目をつぶった途端唇が重なり合う心地好い感触がする。
私が大好きなもの。
体が痛くても、心は充電。



「あの〜すみません。そろそろペニシリンの補充をしたいのですが・・・」

突然随分改まりとにかく気まずそうな南方先生の声が障子の向こうから聞こえ、視線を帰ればそこには男性と女性の人影か映りだされていた。

ここは仁友堂?
そんでもって私は南方先生に、命を救われた?

「・・・残念だけど、夫婦の時間はお預けのようだね」
「え、あはい・・・」
「すみません。どうぞお入り下さい」

耳元でそっと甘く焦らされるように囁かれ今の状況が途端に恥ずかしくなる私を無視して、まるで帯刀さんは何事もなかったように涼しげに受け答えをして招き入れる。

帯刀さんはこう言うこと慣れているから恥ずかしくないのかも知れないけれど、慣れてない私は自覚した途端恥ずかしくて逃げ出したい。
しかも夫婦の時間なんて甘く言われたら、余計ないやらしい妄想をしちゃうじゃない?


・・・って実は、私の方が野獣?
ううん、そんなことない。
これが普通だよね?・・・



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