夢幻なる絆

□4.新婚旅行
21ページ/48ページ



「羨ましいなその体質・・・」
「そんなに羨ましいですか?私は凪さんの体質の方が羨ましいです」

お互いに今までの経緯を事細かく話し終え私のため息交じりの第一声に対し、南方先生は真逆のことを言って同じくため息をつく。

南方先生が幕末にタイムスリップしたきっかけは、
身元不明の男性を手術した時赤ん坊のような腫瘍を摘出したのだが、その後その男性が腫瘍と医療器具を持ち出し逃走。
南方先生はその男性を捕まえようとしたんだけれど、階段でもみ合いになりバランスを崩し転落して気づいたらここに来ていたらしい。
私とはきっかけも、まったく違う。

「夕凪、自分にない物を羨ましがったら駄目だよ」
「だって私がもしそんな体質なら、私の最大の悩みが消えるんです」
「凪さんは、こっちで生きていく覚悟があるんですね。・・・未練はないんですか?」
「未練なんてありません。私帯刀さんと一緒にいられるんなら、すべてを捨てる覚悟はあります。他人にしてみれば幼稚な考えかも知れませんが、私にとっては真剣なことなんです」

無い物ねだりをして帯刀さんに叱られたけれど、私はそれでも自分の固い思いを力ある言葉ではっきりと告げる。

私なりにちゃんと考えた結果。
世界中の人達全員がそれは間違っていると言ったとしても、私はこの考えを捨てる気なんてない。
帯刀さんのためなら、私はきっとなんでも出来ると思う。
いざとなったら、この命さえも捨てられる。

「凪さんはすごいですね。なら凪さんは未来を変えることに、躊躇はないんですね」
「もちろんです。まだ未来では変わってないですが、私はすでに帯刀さんの未来を変えました。南方先生だって、ペニシリンやアンドーナツで未来を変えてるじゃないですか?」
「まぁそれはそうなんですけどね・・・だけど私は・・・」

自分から聞いたことなのに私の偽りのない答えに、どう言う訳が視線を泳がせ歯切れの悪い受け答えをされてしまった。

南方先生は未来を変えたくないのかな?

「そんなに未来を変えたくなかったら、この件はなかったことにしてもいいんですよ。ペニシリンには興味がありますが、少し考えさせて下さい。夕凪、行くよ」
「えちょっと、帯刀さん?そんなばっさりと切り捨てたら、南方先生が可愛いそうですよ」
「そうだぞ帯刀。いきなりどうしたんだよ?私情を持ち込むなんて、お前らしくないぞ」
「・・・今度来る時はすべてを話して下さい。では」
「・・・・・・」

何をそんなに気に喰わないのかそう怪訝しく言って席を立ち、私と龍馬の言葉も聞かずに意味深なことを言って部屋から出る。
仕方がないので私も南方先生に軽く会釈をして、帯刀さんの後を急いで追いかける。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ