夢幻なる絆

□4.新婚旅行
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「は、彼女が妊娠した?」

珍しく弟が相談したいことがあると電話があり、たまには姉らしくしようと思いわが家に招き入れ日本酒を呑み始めた直後、爆弾発言をされてしまい驚きのあまりお酒を口から噴き出してしまった。

てっきり好きな人が出来たとばかり思っていたのに、いきなりそう言う展開で来るんだね。

しかし弟は深刻そのものでとても嘘を付いているようには見えない。

「ああ。だけど俺達まだ付き逢って半年も経ってなくって、お互いにそう言うことになるとはまったく考えてなかったんだ・・・」
「大人なんだから、そこまで考えろよ。・・・私だって考えたんだから・・・」
「え、姉貴彼氏いるのか?」
「わ私のことは、どうだっていいでしょう?」

男の風上にも置けないウジウジしまくる弟に同情することなくバッサリ言い捨てるが、聞かれたくないボヤキを聞かれてしまい焦って無理矢理捩じ伏せる。

タイムスリップして、小松帯刀の妻になりました。

なんて馬鹿正直に言ったって、誰も信じてくれない。

「それで姉貴、俺どうしたらいい?」
「責任取って結婚しろ!!」

バッシ


分かりきったことを聞いてくる愚かな弟にそう言って、テーブルに置いてある歴史本で頭を軽く殴った。

「中絶とかって言う選択の余地は・・・」
「あるわけない。だいたい彼女と一緒にいたいんじゃないの?」
「え、どうなんだろう・・・」
「おい」

ふざけたことを抜かす弟に重要で大切なことを問うと、弟はなぜか本気になって今更悩み始める。
まさか自分の弟がここまで阿呆だったとは思いもしなかった。

そう言えばこいつ帯刀さんと同い年だっけぇ?
私同様こいつも相当ガキだな。

「姉貴は彼氏と一緒にいたいと思ってるわけ?」
「当たり前でしょう?」
「だったら姉貴こそ、そいつと結婚すればいいだろう?」

私は当然のことしか言ってないのに弟は逆切れを起こして、瞬く間に雲行きが怪しくなっていく。
弟の何気ない一言で私の心にひびが入りかけてけれど、胸を強く押さえ必死でそれを修復した。

帯刀さんと泣かないって約束したから・・・。
この半月あまりどんなに寂しくても辛くても、私は必死で涙を堪え頑張ってきた。
私は絶対泣かない。

「だから私のことは、どうでも良いの。大体あんたは彼女のことどう想っているわけ?」
「どうって・・・。彼女のことはそりゃ好きだよ。一緒にいて楽しいし。でもだからと言って、結婚したいまでは思ったことなかった・・・。俺にとってあいつは初めての彼女で、まだ付き逢ったばかりだし・・・」

このままでは私が駄目になると思い弟の本心を探れば、本当に曖昧で答えと言うかよりか言い訳としか聞こえないものだった。
相談とか言って来ている割りには、まるで私に中絶しろと言って欲しいとせがんでいるような気がする。

姉が最低なら、弟も最低。
・・・か。



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