夢幻なる絆

□4.新婚旅行
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「本当にアンドーナツだ。しかも美味しい。こんなのが特効薬だなんて、その南方先生って言う人は天才だね?」
「だろう?南方先生は本当に天才。手術と言う物とペニシリンを使って、あらゆる物を治してきた」
「ペ、ペニシリン?」

安道名津を食べた瞬間私の知っているアンドーナツに幸せいっぱいになり逢ったことのない人を心の底から尊敬すると、龍馬は自分の事のように嬉しそうに先生の栄光を教えてくれたけれど私はまた信じられない言葉を聞き耳を疑う。

ペニシリン。
昔あることでペニシリンに興味を持ち、本を一冊読んだことがあった。
ペニシリンはサー・アレクサンダー=フ・・ラミン・・・ゴ?って言うイギリスの細菌学者が発見した世界初の抗生物質。
実用されたのが1942年の世界第一次大戦で、発見されてから10年以上の月日が掛かったらしい。
確かペニシリンが発見されたのは、1930年ぐらいだったような。

「夕凪?」
「・・・ペニシリンが今あるなんて絶対におかしい。しかもなんでペニシリン?あれって青カビの属名Penicilliumだから、"ペニシリン"になったんでしょう?確かに青カビはすでに発見されているけれど、日本名だったら"碧素"(へきそ)になるんじゃないの?その南方先生って西洋・・・だけど私佐久間象山なら知っているけれど、南方なんて医者聞いたことがない」
「おい、凪。何をぶつくさ言っている?」

久しぶりに歴女の血が騒ぎ出し、マイナー過ぎる知識を絞り出し夢中で考えをまとめようとした。
そんなわけだから帯刀さんと龍馬の声なんか聞こえずスルー。
お馬鹿でどうしようもない私だけれど、夢中になると周りの声が聞こえないぐらいの集中力は備えていたりする。

そんな偉い先生だったら絶対に有名そうだけれども、いくら考えてもそれらしき人物が思い浮かばない。
あまりにも西洋かぶれだから、存在自体闇に葬られたとか?
この時代ならあるかも知れない。
だけどもし・・・。

「ねぇ龍馬。ひょっとしてその南方先生って、私と同じ未来人だったりする?」
「南方先生が未来人?・・・そう言えば以前歴史を変えるとか言ってたな」
「歴史を変える?ならやっぱりそうなんだ」

ある一つの可能性が思い浮かび龍馬に尋ねれば、龍馬は何かを思い出したかのようにそんなことを答えてくれる。
これで様々な疑問はすべて説明が付き、何もかもすっきり出来た。

私以外にもタイムスリップした人がいた。
それはちょっと嬉しいかも知れない。
友達になれると良いな。

「それでその南方先生もこの時代と未来を行き交うことが出来るの?」
「さぁな。俺は南方先生が未来人だとは聞かされてない」
「随分用心深い人ようだ。夕凪、どうやって聞き出すの?」
「もちろん直接聞いて、私も未来人って言います。この安道名津、おかわりしても良いですか?」
「どうぞ好きなだけ。本当に夕凪は疑うことを知らないね」
「すみません。安道名津を2つ追加お願いします」

問題が解決し安心したら甘い物がますます恋しくなり、残りの安道名津をペロリと食べあげても物足りず。
真面目な質問にも私はのんきに答えそれどころかおかわりがしたくなり、無事帯刀さんの許可がなんなくおりたので少年に追加を頼んだ。



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