夢幻なる絆

□4.新婚旅行
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四神の事については京に戻ってから本格的調べることになり、今は新婚旅行を楽しむとになった。
のんきかも知れないけれど、それでも十分だとシロちゃんが言っていたからね。



今日も良い天気で二人仲良く手を繋いで街中を歩いていると、私はある茶屋の旗が気になり立ち止まり首を傾げる。

安道名津。
・・・やすみちなつ?

「どうしたの夕凪?」
「やすみちなつってなんですか?」

私が立ち止まれば当然帯刀さんも立ち止まり、私に尋ねるので旗を指差し聞いてみる。
とてつもなく気になる。

「・・・夕凪、あれは多分あんどうなつだよ。聞いたことない名前だね」
「アンドーナツ?んなものこの時代にあったっけぇ?」

食べ物の歴史までは詳しくない私は馴染みある名前に、余計戸惑い首を捻り声をあげてしまった。
アンドーナツが幕末にあったなんて驚きである。

それとも名前だけ、実物は別の物?

「食べたい?」
「はい、食べたいです」
「いいよ。ならここで休憩にしよう」

と帯刀さんが言ってくれて、近くにいた店の子だろう少年に注文する。
目茶苦茶可愛い少年に癒され、つい見とれていたら

「凪、また帯刀に怒られるぞ?」
「え、りょ龍馬?」

背後からごもっとも過ぎる忠告をされ振り向けば、そこには龍馬がいて私は我に返り笑顔を引き攣らせた。

可愛い子供を見ると我を忘れるいつもの悪い癖。
帯刀さんの事しか考えないって約束したのに、何をやってるんだろう私。

「そんなに私を鬼見たく言わないで欲しいね」
「た帯刀。聞いてたのか?」
「もちろん、すべてね。まったく私の妻は何にでも興味を示すし、すぐ余所見をしてどこかに行ってしまう。なんなら鎖でも付けとく?」
「うっ・・・それだけはご勘弁を」
「・・・十分鬼だろう・・・」

注文し終えた帯刀さんが戻って来たやいなや私達の会話を聞かれていたため、痛過ぎる鋭い視線を向けられたちまち立場が危うくなる。
特に私が。

確かに帯刀さんの言うのはごもっともだけれど、いくらなんでも飼い猫飼い犬の扱いはひど過ぎるよ。

「大体龍馬は何しに来たの?待ち合わせの刻限までまだ時間があるでしょ?」
「偶然だ。俺も安道名津を食べよう思ってきたんだ。南方先生考案の脚気に効く特効薬らしい」
「アンドーナツが脚気の特効薬?お菓子なのに?って言うか待ち合わせってなんですか?」

脚気は今で言うことだとは知っているけれどそんなこと噂でも聞いたことなく驚き、帯刀さんらしくない約束にも驚き目を丸くして二人の顔を交互に見合わせる。

この際アンドーナツのことは先生考案と言うのだからそうだとしても、帯刀さんのことだから今日も二人だけで観光を楽しむとばかり思っていた。

そう言えば今日はどこかの視察に行くんだっけぇ?
だから家老の妻として粗相がないようにしろと、きつく言われてるんだ・・・。
もっちろん可能な限り頑張りはするけれど、それでも少し憂鬱。

「龍馬が船を調達する変わりに、この視察を頼まれた訳」
「そうだったんですか。龍馬も意外と悪知恵が働くんだね」
「悪知恵って言うな、悪知恵って」

意外な龍馬の一面にいくらか気が紛れそう言いながら笑うと、龍馬は珍しく怒り出し言い直しを迫ってくる。


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