夢幻なる絆

□4.新婚旅行
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「チナミ、この方が言っていることはおそらく真実だろう。さきほど小松殿が妻を連れて、江戸へ来たと言う噂を聞いた」
「そそれは本当ですか?しかしこの者が・・・信じがたいです」

やっぱりマコトは賢かった。
そしてせっかくのマコトの助言を無駄にする、チナミちゃんは馬鹿だ。
兄を敬っている癖して、疑うなんてありえない。

「悪かったわね。帯刀さんと不釣り合いな女性で。そんなに私のことを疑うなら、藩邸に行って確かめてみる?今帯刀さん藩邸にいるから」
「・・・うぐ・・・」
「その変わりどうなるか、分かってるでしょうね?」
「・・・・・」

それでもこの言い争いの勝ちを確信した私は偉そうにそう言い切り、ついにチナミちゃんを黙らし完全に幕を閉じた。
これで私の身の潔白が晴れたし、シロちゃんは猫で通って一安心。

・・・やっぱりシロちゃんと出掛けるのは危険なのかな?
これから会話しなければ・・・そんなの絶対に無理だ。

「チナミのご無礼をどうかお許し下さい。凪さん。ですがその猫・・・」
「え?」
「いいえ、なんでもありません。チナミ、凪さんに謝るんだ」
「・・・疑って悪かったな」

何かシロちゃんのことで言いかけるマコトだったけれど飲み込んでしまい、チナミちゃんの頭を無理矢理下げさせ一緒に謝ってくる。
思えばチナミちゃんは何一つも悪くはなく、謝られる必要は本来ないのかも。
強いて言えば悪いのはどっちかと言うと私で、私が謝らないといけないのだろう。
しかし喧嘩に勝った手前、私は謝らない。

「もういいよ。水に流すから。シロちゃん、そろそろ帰ろう?」
「にゃ〜ん」

もうここにはいられずそう言って帰ろうとすると、マコトの懐から紙がヒラヒラと私の目の前に落ちた。

「マコト、何か落ちたよ」
「凪さん、触れないで」

−助けて、苦しい。

深く考えずに私はその紙を取ろうとすると、マコトは血相を変えその紙をサッと取り懐に終った。
それは今までのマコトとはあまりにもギャップがありすぎて、呆気に取られてしまう。

私に見られてはいけない物だった?
機密文書?
だったら二人は隠密だとか?

「マコト?」
「あ、すみません。チナミ、私達も行こうか?」
「え、あはい兄上」

私同様にチナミちゃんも呆気に取られていたけれどマコトの声に我に返り、私達より先に軽くお辞儀をしどこかに行ってしまう。
なぜかそれがやたらに気になり、私は首をかしげる。

そう言えば声が聞こえた気がするけれど、あれは気のせいだったのだろうか?

「気のせいではない。あれは朱雀の声だ。あの者が朱雀を持っているのだな」
「朱雀・・・。・・・ごめん」
「凪が謝ることではない。気にするでない」
「・・・うん、そうだね」

私の疑問を答えるようにシロちゃんから聞かされた重大な発言に、私はあの時のように再び罪悪感に押しつぶされそうになった。

気にするなって言われても、それは無理な話である。



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