夢幻なる絆

□4.新婚旅行
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「・・・ななんのこと?誰ともしゃべってないけど」
「嘘を付くな。その得体の知れない生き物としゃべってだだろう?さてはお前達怨霊だな?」
「な何言ってるの?そんなはずないでしょう?乙女の独り言を盗み聞ぎするなんて最低だわ。これだからデリカシーのないお子様は」

苦し紛れに惚けては見た物の惚けきれなくって、少年はますます疑いの目を向け怪訝しく図星を付かれる。
それでも私は惚け続け少年を冷たい視線で見つめ、難を逃れようと必死に無茶苦茶なことを言って見下す。

少年、ごめん。
でもこれはシロちゃんの正体を隠すためだから仕方がないの。

「オレはお子様でも最低でもない。お前誰に向かって物を言っているのか分かってるのだろうな?」
「知らないわよ。って言うかあなたこそ私を知って・・・知るはずないよね・・・」
「ああ、知らない。お前は一体何者だ?」
「名を問うのならまずは自分の名を名乗るのが常識でしょう?」
「何を偉そうに」

私の放した言葉が少年の禁句だったらしく、少年は真っ赤に顔を染まらせ声を更に張り上げ怒り出す。
強情な私もこうなったら意地になり後にも引けず、一気に低レベルな言い争いになっていく。

「チナミ、一体何をしているんだ?」
「兄上、申し訳ありません」
「・・・ぷっ、女みたいな前。千奈美ちゃんなんて可愛い」

そこへいかにも優しそうな青年がやってきて少年を千奈美と呼び声を掛け問うと、千奈美ちゃんは態度を180℃変え猫を被ったように大人しくなる。
この時代らしい兄を尊敬している何よりの証拠だ。
私は千奈美ちゃんと言う名があまりにも可愛らしくて、小馬鹿にして笑ってしまった。

男なのに、千奈美ちゃん。
でも少年の愛らしい顔立ちならそれもお似合いかも。

「お前にオレの名のことでつべこべ言われる筋合いはない。そもそもチナミは本名ではない」
「だったら本名はなんなの?チナミちゃん」
「そんなのどうだって良いだろう?それからちゃん付けするな」

どうも私にはチナミちゃんを怒らす才能があるのか、余計話を混乱させるだけだった。
青年がいなければ、私はチナミちゃんに殺されかねない。

「チナミ落ち着け。私の名は藤田小四郎。皆からはマコトと呼ばれています。あなたの名 前を教えていただけますか?」
「私の名前は小松夕凪。みんなから凪と呼ばれている」

兄のマコトは随分礼儀正しく最初に自分の名を名乗ったので、私も快く自分の名前を名乗れた。
弟のチナミちゃんとは偉い違いである。

藤田小四郎・・・どこかで聞いたことがある名前だったけれど、どこの誰だったっけぇ?う〜ん思い出せない。

「兄上、この者は不審者です。その得体の知れない生き物と話しておりました」
「失礼な事言わないでちょうだい。私これでも薩摩藩家老小松帯刀の妻なの。それにこの子は猫よ」
「ニャー」
「!!嘘を付くな」
「すぐ嘘って言うな。傷付くだろう?」

相変わらず私に対して敵対心を持って喧嘩腰であるチナミちゃんに、私は最後の手段とばかり帯刀さんの役職と名を言えば一瞬だけ怯み再び威勢良く吠える。
私も負けじと吠え返し、いがみ合い火花を散らす。



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