夢幻なる絆

□4.新婚旅行
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「あれ小松さんに小松婦人?」
「え、小松婦人?」

港にようやく到着し龍馬と別れ私達も宿に行こうとした時、良く知る声が聞き慣れない呼び方で私達に声を掛ける。
その声は少し驚いているようで、どこか半信半疑。
私ももし予想通りの声の主なら、かなり驚いただろう。

でもよく考えたら江戸に来ている自体は、そう考えられなくもないか。

「サトウくん?君もこっちに来てたんだね」
「ええ、用事がありまして。お二人は?」

やっぱりその人は予想通りの人だった。

まさかここで出会うなんてなんたる運命・・・じゃなくて偶然。

「ハネムーンだよ」
「ハネムーン?そのウェディングリングと言い、小松婦人はひょっとして西洋文化が好きなのですか?」

アーネストなら分かると思ってわざとそんな答えをすると、またもや意外そうに変な事を聞かれてしまう。
私にして見ればどっちも当たり前過ぎることだけれど、アーネストは私から未来人ってことを知らない。
だから私は西洋文化が好きな人だと思われるのが当然なのかも

説明するのが面倒臭いから、そう言うことにしとこう。

「うん。言葉は分からないけれどね」
「本当にあなたは変わった女性ですね。ではそんな小松婦人と小松さんにディナーを招待したいのですが、江戸にはどのくらい滞在するのでしょうか?」
「しばらくはいるつもりですよ」
「なら記載は後ほど知らせるってことで、いかがですか?」
「そうだね。夕凪は行きたい?」
「私はその・・・。帯刀さんが決めて下さい」

嬉しい夕食のお誘いを受ける物の喜んで頷いたらまた帯刀さんの機嫌が悪くなると思い、様子を伺いながら聞かれても曖昧に返答し判断を任す。

これで大丈夫だよね?

「夕凪が決めなさい」
「え・・・」

これは絶対試されているのがわかり、でも何を言えばいいのか分からない。
本音を言えば行きたいけれど、それで帯刀さんの機嫌を損なしたくなかった。
別に帯刀さんが怖いからじゃなくって、私のせいで傷つくのはもう嫌だったから。

「小松婦人?」
「夕凪、遠慮しなくても良いんだよ。私が付いているんだから」
「なら喜んでご招待をお受けいたします」

なかなか返事を出さない私を不審がるアーネストを見て、満足した笑みを浮かべた帯刀さんのお許しが出たので私は頷き丁寧に承諾する。

そうだった。
なにも招待されるのは私だけじゃないんだから、そんなことを考えなくても別にいいんだよね?
何私ったら難しく考えてたんだろう?
馬鹿だな。

「ありがとうございます」
「妻と楽しみにしてるよ。それじゃぁ行こうか夕凪?」
「はい。アーネスト、またね」
「ええ、私も楽しみにしてます。では」

一度決まれば後はスムーズに話は進み、私達とアーネストはそのまま別れた。


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