夢幻なる絆

□4.新婚旅行
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「うわぁ〜きれい」
「ああ、まったくその通りだね」

満天の星空を私と帯刀さんは肩を抱き寄せ見上げる。

それはおとぎの世界のワンシーンで、幼い私が夢見ていた物。
波音しか聞こえない静かな海で、私だけの王子様と二人で満天の星空を眺める。

私だけの王子様。
そして私だけの魔法使い。
私の望みをすべて叶えてくれる。

「そう言えば帯刀さんは、いつから私を好きになってくれたんですか?まさか一目惚れとか?」
「まさか。最初はただの興味本位で何かに使えると思ったから、置いてあげただけ。はっきり言って、気ままな猫」
「そうですか。・・・帯刀さんはそう言う人だってこと忘れてた・・・」

少しだけ期待して聞きたかったこと聞いて見れば、お世辞を言うこともなくズバッと痛いことを言われてしまった。

聞いた私が馬鹿だった。
私見たいな人が帯刀さん見たいな人に、一目惚れされるはずがない。
私に限ってないってことぐらい今までよく分かっていたはずなのに、あまりにも帯刀さんに愛されているから図に乗ってたかも知れない。

「そのうち一緒にいるうちに、傍に置いて起置きたくなった。面白くて飽きなかったからね。この時もまだ恋愛対象とは程遠い」
「・・・最低ですね」

泣きたくなる新事実に、最早それしか言えなかった。

私の扱いは猫と同じだったのか。
思えば最初の頃は、雑に扱われたよね。
なんか凹む。

「ふて腐れない。大切なのは過去より今と未来でしょ?」
「まぁそれはそうですけれど・・・。私ってやっぱり女としての魅力がないんですね・・・」
「そんなのなくていい。夕凪は私だけに愛されていればいいでしょ」

凹みまくる私に帯刀さんはそう言って、私を力強く抱きしめる。
こんな卑怯なこと言われたら、凹んでられないし愚痴なんか言ってられない。

確かに帯刀さんの言う通りだ。
帯刀さんに愛されていれば、他の異性にはモテなくたって良い。
帯刀さんさえいれば、私は満足。

「そうでした。私には帯刀さんだけで十分です。変な事言って、すみませんでした」
「いいよ、分かれば。ならそろそろ戻って寝ようか?」
「あ、ちょっと待って。私帯刀さんに渡すのがあるんでした」

これですべてが問題解決し帯刀さんからこれからを誘われたけれど、私は大切なことを思い出しそう言いながら懐中時計を渡す。

幕末には懐中時計なんて、ほとんど無意味な物だと知っている。
だけどそれでも私はこの懐中時計を選んでしまった。


「これは懐中時計だね。サトウくんが持っているのを、見たことがある」
「はい。これは写真入れ付きになっていて、開けると結婚式の時の写真が貼っています」
「へぇ〜これが未来の技術ね。ありがとう大切にするよ」
「どういたしまして。これ私とお揃いなんです」

時計よりカラー写真に興味を示し嬉しそうにしている帯刀さんに、私はそう言って懐からペア−の懐中時計を見せる。

私から帯刀さんへの最初のプレゼント。



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