夢幻なる絆

□番外編1
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凪、捕まる




「お、やってるやってる。あれがのちの新撰組・・・噂通りの美形集団」


丹生寺にやって来た私は稽古中の数人を見つけ、誰にも見つからないようそっと見ることにした。
中でも愛らしいでも無表情の髪が長く一纏めにしてある少年に目がつく。
萌え系大爆発の少年は好物でもあるけれど、剣が優雅に舞っていて魅力を感じる少年。

沖田総司かな?
藤堂平助かな?


「ねぇ、君。こんな所で何してるの?」
「今良い所なんだから後にして」


誰かに肩を叩かれて話し掛けられたけれど、夢中になっていた私はその手を払いのけ相手にせず。


「良い所?」
「そう。あの少年の剣断ちが芸術だなって」
「ふぅん。君に芸術なんて物がわかるんだ」
「失・・・はひぃぃ」


あまりにも失礼で侮辱してくる声に怒った私は視線を向けた瞬間、一気に血の気が引き青ざめ地獄をみる。
笑顔の帯刀さんが背後にいた。
ただその笑顔の裏には、とてつもない邪気が漂い目が笑ってない。

大魔王降臨だ。


「もう一度聞くよ。こんな所で何をしてるんだい?私はさっき君に優しく、帰りなさいと言ったはずだよね?」
「どうやら道、間違えたみたいですね・・・」
「凪くん、嘘はいけないよ。君は嘘を付くのが、極端に下手なんだから」


駄目元で笑顔を引き攣らせて精一杯のそれらしい嘘をついては見たけれど、即効嘘だと見抜き私を強い眼差しで見つめる。
やましいことありまくりな私は、挙動不信のように視線を泳がす。
心臓がどんどん高鳴って行くが、それはときめくではなく恐怖でしかない。
逆らえば命はないと思う。


「・・・・。目の保養・・・」
「帰るよ。凪くん」


だから私は少しの沈黙後限りない小声で白状するとあまりにもおバカな答えに、呆れて声のトーンを更に低くし私の腕を掴み強引に引っ張る。
かなりの握力があって痛たい。


「分かりましたから、引っ張らないで」
「本当?逃げたりしたら、ただじゃすまないよ」
「逃げません」


私の言葉なんてまったく信用してない冷たいに口調にもめげず、力ある声でそう断言すると意外にもあっさりと解放してくれる。
あっさり過ぎで拍子抜けしてしまい、帯刀さんの顔を覗き込む。


「どうしたの?そんなに意外だった?」
「はい、私の言葉を信じてくれたんですか?」
「言ったでしょう?私は君の嘘が分かると。だから」
「なんだそう言うことですか。別に私を信用してくれたんじゃないんですね」
「信用されたかったら、下手な嘘なんてつかないこと」


密かな期待はバッサリ切り捨てられ少しだけがっかりするとも束の間で、言い訳が出来ないぐらいの痛い所をつかれ苦笑するしかなかった。

そうです。
私が帯刀さんを裏切りました。
信用されないのは、自業自得です。


「ごめんなさい。もう嘘は絶対に付きません」
「約束出来る?」
「はい、約束します」
「今度破ったら、外出禁止だからね」


シュンとして心の底から謝り、そんな約束を帯刀さんと交わす。

出ていけって言われなくって、本当によかった。
しかも破るつもりはないけれど、破っても外出禁止程度。
帯刀さんって、怖いけれど優しいな。



そして帯刀さんの背中を追いながら、金魚のうんちのように後を付いて行く。



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