夢幻なる絆

□3.居場所
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「帯刀さん、龍馬の所にいってきます」
「いけません」
「え〜、なんでですか?親友の龍馬に結婚の報告をしに行くんです」
「しなくていい。なぜなら龍馬も婚礼式に招いているから」
「婚礼式?誰のですか?」
「・・・はぁぁ。夕凪は今日も大馬鹿だね」

翌朝昨夜のことはなかったかのように龍馬の所へ行こうとすれば帯刀さんに根っこ首を掴まれ止められ、言われた言葉を理解できない私に対し深いため息をつかれ久しぶりに馬鹿にされる。
それでも私は分からず、きょとんと帯刀さんを見上げる。

帯刀さんなんか、機嫌悪くない?
私また変な事言ったかな?

「私と夕凪のに、決まってるでしょ?」
「やるんだ婚礼式」

言われてみれば、確かにそれは当たり前のことかも知れない。
帯刀さんは家老様だから、そう言う形式は多分大切なんだよね?
まさかそこまでやるとは思わなかったからびっくりして普通の反応をしただけであって、ちゃんと理解すれば結婚式は一生に一度のことだから夢のようで嬉しい。

「昨日の部屋に衣装を用意させてあるから、さっさと行って着せてもらってきなさい」
「分かりました。だけどそれなら昨日言ってくれれば、良かったのに・・・」
「男をたぶらかすだけたぶらかせて、すぐに寝たのはどこの誰だろうね?」

喜んでいたのは束の間でつい余計なことを口走ってしまうと、ますます帯刀さんの機嫌が悪くなり分かりきったことを白々しく尋ねられる。

はい、それは私です。
昨夜帯刀さんに服を脱がされ強く優しく抱きしめられたられた途端、眠気が急に襲ってきて気づいたら朝の日差しが差し込んでいて帯刀さんが隣で寝着を着たまま寝てました。

男をたぶらかしたのは知らないけれど・・・。

でも言い訳をすると悩んでばかりいたから寝不足な上に、夜から夕方に召喚されたせいなんだ。
それであまりにも幸せで安心したら、何かの糸が切たわけ。
だから私はそんなに悪くわ・・・ない・・・多分・・・。

「・・・ギク。梅さん達を待たせちゃ悪いから、さっさと行ってこようと」
「夕凪」
「はい?」

言わぬが花と言う言葉があるように、私はしらを切りそう言ってその場を乗り切ろうとする。
なのに帯刀さんは低い声で私の名だけ呼び、私は必要以上に身構え振り向くとなんの脈略もなくキスを交わす。
深くでもなくスタンプのように。

「これですべて許してあげる」
「帯刀さん・・・」

と耳元で囁き帯刀さんの顔に今日初めて笑顔が浮かび、私は頬を赤く染めまた幸せを噛みしめる。



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