夢幻なる絆

□3.居場所
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「あ、アーネストさんだ。アーネストさん」
「ちょっと夕凪、待ちなさい」

会場到着して会場内に入ってすぐに私はアーネストさんを見つけ帯刀さんと繋いでいる手を放し、帯刀さんの言葉を無視して転けないように気を付けアーネストさんの元に駆け寄る。

今日もアーネストさんは、王子様のように爽やかで格好いい。

「あなたは小松さんの所にいた・・・Stupid cat・・・」
「Stupid cat?アーネストさんまで酷い」
「あなた英語が分かるのですか?」
「いくら私が馬鹿でも簡単な単語ぐらいは、ほんの少しだけ分かります」

たまたま私の知る単語を言われそれは酷いことにズッコケそうなりながらも、すかさず激しく反論すれば驚かれマジマジ見つめられた。
その視線は気のせいなのか、私を完全に馬鹿にしてる。

それは単純に私をこの時代の人間だと思っているかも知れないけれど、逆にそれはそれで酷いこと。
分からないからって堂々と言うなんって、アーネストさんって性格悪いんだ。
見かけ倒しかよ。

「それはすみません」
「いえ、いいんです。あなたが別にどんな黒い性格をしてようが、私には関係ないですから。所詮憧れの人なんて、本性はそんなもんよ」
「そう言うあなたも酷いことを言いますね。大体あなたが、どうしてここに?」

皮肉を込め面と向かって仕返しとばかりに言えば、アーネストはようやく本性を現し表情も変わり私を敵対する。
これで私の憧れの白馬の王子様が、音と共に崩れていく瞬間。

「帯刀さんと一緒に来ました。本日はお招きいただきありがとうございます」
「嘘はいけません。小松さんは奥さんと来ると言ってました。あなたが小松婦人?まさかそんなはずがない」
「ムカ。私、小松夕凪です。以後、お見知りおきを。フン」

今さら遅いとは分かっていても立場上言わなきゃいけないことを婦人ぽっく上品にすれば、アーネストはあざ笑い見くだしたから頭に来た私は最後に名と死語を言い捨てくるりと背を向ける。
するとそこには明らかに機嫌が悪い帯刀さんがいて、私と視線が交わったことを確認するなり私の腕を掴み無言のまま歩き出す。

私が失礼な態度を取ったから怒ってる?
それとも?



「あの〜、帯刀さんどうしたんですか?」
「どうしたんですか、じゃないでしょ?君は私の妻として自覚はあるの?」
「あありますよ。そりゃぁ態度は悪かったかも知れないけれど、ちゃんとアーネストに小松夕凪って名乗ってきました。え、小松夕凪・・・」
「夕凪?」
「なんか今になって恥ずかしくなってきました。私今日から島崎じゃなくって、小松なんだ・・・」

帯刀さんに怒られ弁解中そんなことに今さら気づき、顔を真っ赤に染まらせ手を胸に押さえ動揺を抑えるようとした。
小松夕凪という言葉がくるくる頭の中で回り、だんだん頭の中が真っ白になって意識が遠ざかっていく。



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