夢幻なる絆

□3.居場所
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「まさかここまで言っても分からない?それとも私を困らしたいの?」
「・・・どうして?」
「本当に君は困った人だね。そんなの私が君を愛してるからに、決まってるからでしょ?」

なかなか返答しない私に痺れを切らしたらしく、私を帯刀さんは包み込み最後の手段とばかりに耳元で甘く囁かれる。
これでようやく帯刀さんの言葉が信じられることが出来、嬉しくて夢のようで涙を流す。

「私でいいんですか?凡人以下で性格も最低な私で?」
「安心しなさい。凪くんのことならすべて知ってるからね。非合理だとは思うけどそれでも私は君を愛してる」
「私も帯刀さんのことが大好きです。だからよろしくお願いします」

信じることが出来れば断ることもなく、涙ながら約束通りYESで頷き強く抱きしめ返す。

何もかもがいきなり過ぎて正直あまり現実味がないくまだ少し信じられなかったりもするけれども、それでも私は今までに味わったことがない程の幸せをかみしめ満足だった。
心が一気に軽くなり、馬車の窓から見えている景色がなんだか輝きだしている。


「ようやく私の物になったね。夕凪」
「!!!」
「そんなに驚くことないでしょ?夕凪は今日から私の正妻なのだから」

私の答えに満足した途端いつもの帯刀さんに戻り、私の呼ぶ名を変え私の反応を楽しむ。

夕凪
帯刀さんの正妻。

なんか恥ずしくて照れるけれど、そう呼ばれるのは嬉しいな。
私今日から歴史に反して、私が帯刀さんの正妻になるんだね。
もしかしたら未来に戻ったら、小松帯刀の正妻は私になってたり。
そしたら私のことも本に書かれる?

身元不明で坂本龍馬の親友だった凡人以下でドジな夕凪。
彼女が小松帯刀の正妻であったことは、今もなお幕末の不思議でしかない。
・・・・・・・・。
・・・・・・・・。
そんなの絶対嫌だよ。

「私立派な帯刀さんの正妻になれるように、これから一生懸命頑張ります」
「頑張らなくて良いよ。夕凪が張り切って頑張ると、ろくな結果にならないからね」
「うっ・・・。それはまぁ・・・そうですけれども・・・」

幕末の不思議にならないよう元気良くそう宣言すると、バッサリ切り捨てられ深いため息をつかれる始末だった。

でもそれはいつもと違って苦笑する私を再び抱きしめ、私と帯刀さんの唇がそっと重なり合う。
私にとっては、これがファーストキス。

甘くて柔らかい・・・。

もっともっと帯刀さんのことが、好きになっていく。



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