夢幻なる絆

□3.居場所
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「帯刀・・・?」
「え、帯刀さん?それからシロちゃんも・・・」

龍馬が驚いた様子でいるはずもない帯刀さんの名を呼んだので私も反射的に顔をあげると、そこには確かに帯刀さんとシロちゃんの姿があり二人とも少し息が上がっている。

遅くなると言っていたのに、どうしてこんなに早いの?

「シロが今夜夕凪が未来に戻ると教えに来てくれてね。こうして急いで戻って来たんだよ」
「え・・・?」
「そんな顔をするでない。今度はすぐに戻れる我には分かる」

いきなり恐れている恐怖を帯刀さんは平然とした様子で言われてしまい脅える私に、シロちゃんが安心させようとそう付け足す。

でも私はそれでも満足できない。
時間とかそう言う問題じゃない。

「イヤです。私は帰りたくありません」
「夕凪、 わがままは言わない。戻って来たらそうだね・・・旅行に連れてってあげる」
「旅行?」
「そうだよ。夕凪の行きたい所があれば、どこだって連れて行ってあげるから」

思いっきりわがままを言って帯刀さんに抱きつくと、帯刀さんは私を強く抱きし返して優しく私を落ち着かせようとする。
暖かくて不思議と安心出来る私だけの居場所。
平然そうに見える帯刀さんだったけれど、抱きしめられて体が震えてることが分かった。
そして帯刀さんも私と同じで、離ればなれになるのが辛いことに気づく。
そう思ったらたちまち気分が晴れ、同じ想いだってことに嬉しくなる。
少しだけなら我慢が出来そうな気がした。

「だったら江戸と日光に行きたいです」
「江戸と日光ね。それまで私は政務をすべて片付けて宿を手配しておくから、けして未来で泣いたりしたら駄目だよ。約束できる?」
「はい。絶対泣いたりしません」

今泣いたカラスがもう笑うように私は涙を拭き取り笑顔で帯刀さんと約束する。
約束はもちろん甘くて深い口づけ。



「お〜い、俺とシロのことを忘れるな」
「そうだぞ。我も凪と別れのあいさつを交わしたい」
「駄目。君達空気ぐらい読めないの?」
「ひでぇ〜、帯刀はまだ夜があるだろう?」
「な何言ってるの、龍馬?」

忘れかけていた龍馬とシロちゃんが私達の機嫌を伺うように存在をアピールするけれど、帯刀さんは冷たく言い返せば龍馬は飛んでもないことを言いだす。
途端に私は真っ赤に顔を染まらせ、ひっくり返った声を上げる。
いくら本当のこととは言え、他人に声を出して言われたくない。



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